2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of carbon flame catalysts for oxygen reduction reaction with 4 electron process
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19K15356
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
武安 光太郎 筑波大学, 数理物質系, 助教 (90739327)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 燃料電池触媒 / 窒素ドープカーボン / 分子状モデル触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、酸性条件下で4電子還元反応を進行させる窒素ドープカーボンの局所構造とその反応メカニズムを明らかに、それに基づいてボトムアップ的に高活性な触媒を合成することを目的としている。今年度はまず、窒素を含んだ芳香族分子からなる分子状モデル触媒と、窒素ドープグラフェン触媒を用い、硫酸水溶液中での酸素還元反応前後でのex-situ XPS測定およびオペランド顕微ラマン分光測定を行った。その結果、硫酸中ではピリジン型窒素はピリジニウムとして存在しており、カウンターアニオンとして硫酸水素イオンが吸着している。電位を印加していくと、カウンターアニオンが外れながらピリジニウムが還元され、反応が進行するという描像が得られた。分子状モデル触媒の酸性中での酸素還元反応の立ち上がり電圧は0.3-0.4 V vs RHE程度で、PtC触媒のおよその立ち上がり電圧1 V vs RHEと比較すると極めて低い。アルカリ性水溶液中では、カウンターアニオンはOH-で、硫酸水素イオンなどと比較して小さく、反応阻害を起こしにくい。実際に分子状モデル触媒の活性を、アルカリ性水溶液中で測定したところ、立ち上がり電圧は0.8 V vs RHE付近まで大きく上昇した。これは、モデル分子触媒の活性向上には、カウンターアニオンの除去が鍵となることを示している。次年度は、カウンターアニオンの活性点への接近を防ぐ疎水性を強化した触媒を調製し、上記メカニズムを踏まえた触媒活性の向上に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はまず、窒素を含んだ芳香族分子からなる分子状モデル触媒と、窒素ドープグラフェン触媒を用い、硫酸水溶液中での酸素還元反応前後でのex-situ XPS測定およびオペランド顕微ラマン分光測定を行った。まず分子状モデル触媒のXPS測定では、反応開始前にはピリジン型窒素にプロトンが吸着してピリジニウムが形成していることが観測された。電位を印加していくと、0.6-0.4 V vs RHE付近で、窒素の電子状態がピリジニウムから変化し、低バインディングエネルギー側にピークが出現した。DFT計算との比較から、ピリジニウムが還元されてNHになっている可能性が高いと考えている。硫酸水溶液中ではピリジニウムにはカウンターアニオンとして硫酸水素イオンが吸着していると考えられ、これはXPSのS 2pピークおよび窒素ドープグラフェン触媒の顕微ラマン分光測定による結果から確かめられた。以上をまとめると、硫酸中ではピリジン型窒素はピリジニウムとして存在しており、カウンターアニオンとして硫酸水素イオンが吸着している。電位を印加していくと、カウンターアニオンが外れながらピリジニウムが還元され、反応が進行するという描像が得られた。分子状モデル触媒の酸性中での酸素還元反応の立ち上がり電圧は0.3-0.4 V vs RHE程度で、PtC触媒のおよその立ち上がり電圧1 V vs RHEと比較すると極めて低い。アルカリ性水溶液中では、カウンターアニオンはOH-で、硫酸水素イオンなどと比較して小さく、反応阻害を起こしにくい。実際に分子状モデル触媒の活性を、アルカリ性水溶液中で測定したところ、立ち上がり電圧は0.8 V vs RHE付近まで大きく上昇した。つまり、これは、モデル分子触媒の活性向上には、カウンターアニオンの除去が効果的であるという指針までを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
カウンターアニオンによる反応阻害を低減するためには、疎水性環境の導入が効果的である。これは、疎水性環境ではカウンターアニオンがピリジニウムに接近しにくいことによる。疎水性環境の構築方法として、現在二つの候補を考えている。一つは、三次元構造を持たせるなどして疎水性を向上させたグラフェンを用意し、それを担体として分子状モデル触媒を吸着させる方法である。もう一つは、フラーレンなどを出発物質として、空隙に由来する疎水性を付与したモデル触媒を合成することを考えている。2020年度中に、両者の調整を試す。また、分子状モデル触媒の4電子還元反応効率および活性について、分子の大きさ、すなわちπ共役系サイズの効果が明らかになっていない。π共役系が小さいと電子の局在度が高まり、酸素や中間体が安定化されやすい。一方で、反応が進行する際には、sp3性が入り、炭素骨格が歪む必要がある。炭素骨格の歪みエネルギーは、大きいπ共役系やアームチェアーエッジ構造が吸収しやすい。総合的にどの構造が活性であるかは、π共役系の大きさ、エッジ終端構造を制御した系での研究が必要であり、未解明となっている。この点について、大きさを変えた分子状モデル触媒やグラフェンナノリボン系触媒の活性測定および分光からアプローチする予定である。
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Research Products
(13 results)