2019 Fiscal Year Research-status Report
半導体光触媒と金属ナノ粒子触媒の協奏的な触媒作用を利用した有機変換反応の開発
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19K15359
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 旭 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (30769443)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光触媒 / 酸化チタン / 有機化合物変換 / ナノ粒子 / パラジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
固体酸化物光触媒に対して金属ナノ粒子などの助触媒を担持することにより,その触媒性能が大幅に向上する例が多く報告されている.触媒性能が向上する代表的なメカニズムとして,光照射によって生成した電子や正孔が助触媒上で速やかに消費され,電荷分離が促進されることが知られている.一方で,我々は,酸化チタン光触媒に対して,酸化アルミニウム(アルミナ)担体にパラジウムナノ粒子を担持した触媒を添加することにより触媒活性が向上することを見出した.この系では,アルミナは光励起されないため,酸化チタンの光励起で生成した電子と正孔により反応が進行していると考えられるが,アルミナ上に担持されたパラジウムが電荷分離に寄与する機構については不明な点が残る.そこで本研究では,光触媒反応における金属ナノ粒子担持触媒の添加効果を明らかにすることを目的とした. 初年度にあたる2019年度では,紫外光照射下でのベンゼンとアセトニトリルからのシアノメチルベンゼンの合成反応に対して,酸化チタンにパラジウム担持アルミナ触媒を添加することで従来の酸化チタンにパラジウムを直接担持した触媒よりも高い触媒性能を示すことを見出した.また,X線分析によるパラジウムの状態分析を行い,酸化チタン上とアルミナ上でパラジウムの電子状態が異なること示す結果を得ており,この電子状態の違いが活性向上に寄与している可能性が考えられる.本研究成果に関しては,学会等で口頭・ポスターにて発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にあたる2019年度は,紫外光照射下でのベンゼンとアセトニトリルからのシアノメチルベンゼンの合成をモデル反応として選択し,酸化チタン光触媒に対するアルミナ担持パラジウムナノ粒子触媒の添加効果を詳細に調べた.従来の助触媒の利用法であるパラジウムを酸化チタンに直接担持した触媒系と酸化チタンとアルミナ担体パラジウムナノ粒子触媒の物理混合系について,様々なパラジウム添加量の試料を調製し,その光触媒反応活性の比較を行った.その結果,物理混合系では,従来の直接担持系に比べて,最適なパラジウム添加量条件において1.6倍のシアノメチルベンゼンが得られることがわかった.また,本反応は,酸化チタンのみ,アルミナ担体パラジウムナノ粒子触媒のみ,酸化チタンとアルミナ担体の物理混合では,目的物の生成は認められなかった.すなわち,酸化チタンとパラジウムナノ粒子の両方が目的物の生成に必要であることがわかった.以上の通り,現在までに,酸化チタンとアルミナ担体パラジウムナノ粒子触媒の物理混合系の有効性を示すことに成功している. さらに,酸化チタンとアルミナ担体パラジウムナノ粒子触媒の物理混合による活性向上の機構に関して検討するために,担持されたパラジウム種のX線分析を行い,酸化チタン上とアルミナ上では,パラジウムの電子状態が異なることがわかった.このパラジウムの電子状態と触媒性能との関係については今のところ明らかにできていないが,今後さらに検討を進める予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの検討により,ベンゼンとアセトニトリルからのシアノメチルベンゼン合成反応に対して,アルミナ担持パラジウム触媒の添加効果が認められた.しかしながら,本反応系では,生成物として得られるシアノメチルベンゼンが少ないため,メカニズムの解明のための詳細な検討には不向きであることがわかった.そこで,今後は,メカニズムの解明のための実験を視野に入れ,他の光触媒反応への展開を検討することを計画している.また,メカニズムの解明のためには,反応中における金属ナノ粒子の状態を明らかにすることが重要である.そこで,次年度にあたる2020年度ではX線分光法を使った金属ナノ粒子のその場観察を計画している.
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Causes of Carryover |
年度末に複数の学会参加を予定していたが,コロナウイルスの関係で中止となったため,その旅費に相当する費用分の繰越金が生じた.次年度の学会旅費に充てることを計画している.
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