2020 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ粒子への異物認識を巧みに利用/制御した新規アルツハイマー病治療システムの開発
| Project/Area Number |
19K15364
|
|---|
| Research Institution | The University of Tokyo |
|---|
Principal Investigator |
太田 誠一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40723284)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
| Keywords | 医用ナノ粒子 / アミロイドベータ / アルツハイマー病 / 生体分子標識 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生体による人工物の排除機構を巧みに利用・制御し、アミロイドβ (Aβ)標的化ナノ粒子を用いた新規アルツハイマー病治療法を開発する。ナノ粒子を薬物送達に使用する際には粒子が免疫系に”ゴミ”として認識され貪食されてしまうことが課題であった。本研究ではこれを逆手にとり、アルツハイマー病の原因とされるAβに金ナノ粒子を特異的に結合させ、Aβと共にミクログリア細胞に効率的に除去させることを狙う。
昨年度、Aβ結合性色素であるコンゴーレッド(CR)を修飾した金ナノ粒子の合成に成功し、この粒子のAβへの選択的な結合能を示した。今年度は、CR修飾金ナノ粒子の結合による、Aβ凝集体の解砕効果について検討した。Aβ凝集体のTEM像をCR修飾金ナノ粒子の添加前後で比較したところ、粒子の添加によってAβ凝集体が解砕されている様子が確認された。Aβの凝集を蛍光によって定量するチオフラビンTアッセイによって評価を行った結果、粒子の添加によってチオフラビンT由来の蛍光が30分で20%程度まで減少し、Aβ凝集体の解砕が定量的にも確認された。Aβ凝集体の隙間からCR修飾金ナノ粒子が繊維表面に結合し、立体反発によって凝集体を解砕したと考えられる。
さらに、CR修飾金ナノ粒子の結合による、Aβ凝集体のミクログリア細胞による貪食促進の効果を、in vitroで検証した。CR修飾金ナノ粒子の添加の有無による、蛍光修飾Aβ凝集体の取り込み量の違いをフローサイトメトリーによって比較した結果、CR修飾金ナノ粒子の添加によって取り込み量が2倍程度上昇することが示された。これの結果により、本研究で開発されたCR修飾金ナノ粒子によってAβ凝集体を標的することで、凝集体の解砕及びミクログリア細胞による貪食促進により、脳内からAβ凝集体を効率的に除去できる可能性が示された。
|
