2020 Fiscal Year Research-status Report
混合糖の取込能力の向上を指向した適応進化による高発酵性大腸菌株の創出
Project/Area Number |
19K15372
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
和田 圭介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (70828300)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大腸菌 / 実験室進化 / 代謝工学 / グルコース / キシロース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、変異導入を応用した実験室進化技術によって、グルコースおよびキシロースを同時に利用できる大腸菌株を創出する。微生物を利用した木質バイオマスからの有用物質生産において、基質である糖の取込速度は目的物質の生産速度を決める要因の1つである。木質バイオマス由来の糖化液に含まれる糖源のほとんどはグルコースとキシロースだが、グルコース存在下では他の糖の取込機能が制限されることが知られており、グルコースおよびキシロースを同時に利用できる大腸菌株の開発が課題となっている。また、糖の取込に関するメカニズムは複雑に制御されているため、糖全体の取込速度の強化に有効な遺伝子改変箇所を人為的に同定および改変することは困難である。そこで本研究では、自然突然変異の導入および蓄積を促進させる条件下で大腸菌株を培養することで、糖全体の取込速度が強化された株の創出を目指す。 本年度は、糖全体の取込速度の強化に向けた自然突然変異の導入および蓄積が促進される選択圧をかけられるシステムの構築に着手した。前年度までに行った、大腸菌を栄養性の異なる3種類の培地で培養した際のRNA-Seqをキュレーションすることで、グルコースまたはキシロース特異的な発現を示す複数のプロモーター配列群を取得した。各プロモーター配列の配下に蛍光タンパク質遺伝子を配し、取得したプロモーター群が各糖特異的な発現を示すことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
申請書の計画では、グルコースまたはキシロース特異的なプロモーター配下に自然突然変異の誘発システムを導入するため、RNA-Seqデータに基づいて抽出してきたプロモーター配列の機能性を確かめる予定だった。しかし、プロモーター配列の予測に使用したアルゴリズムに不備があったため、機能性の確認のためのシステム構築に遅れが生じた。また、修正したアルゴリズムを使って抽出してきたプロモーターの機能性を確認したところ、各糖の存在下で特異的な発現を示さなかった。現在、RNA-Seqデータのキュレーション条件を変更し、プロモーター配列の抽出を試みている。 以上のように、予定の実験室進化システムの構築の進捗が遅滞しているため、区分を遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
実験室進化のシステムの構築および培養を進めていく。具体的には、修正したアルゴリズムを用いて各糖存在下で特異的に発現する遺伝子の発現を制御するプロモーター配列を、前回とは異なるキュレーション条件の下で抽出し直し、蛍光タンパク質遺伝子を用いて、各糖存在下で特異的な発現を示すことを確認する。次に、特異的な発現を示すプロモーター配下に変異誘発システムを配し、大腸菌株の継代培養を行い、継代培養後の大腸菌株に含まれる変異点を抽出し、その中から混合糖の取込速度の向上に有効な変異を同定し、それらの変異をもつ高発酵性大腸菌株を構築する。また、構築した高発酵性大腸菌株にD乳酸生産システムを導入し、混合糖の取込速度の改善によるD乳酸の生産能力の変化を定量的に検証する。
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Causes of Carryover |
実験の進捗状況が遅れたため、当初購入する予定だった試薬(13C標識グルコース等)の代わりに進捗を補填するための試薬を購入したため、物品費に差が生じた。また、新型コロナウィルスの影響で当初予定していた国際学会が中止になったため、旅費が残った。 実験の進捗に合わせて13C標識グルコースの購入費、ならびに現在準備中の英語論文の英文校閲費および投稿費に充当する。
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