2020 Fiscal Year Annual Research Report
配位ナノ空間を用いたグラフェンナノリボンの精密合成
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19K15374
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北尾 岳史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70830769)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多孔性金属錯体 / ナノカーボン材料 / ホストーゲスト / グラフェンナノリボン |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンナノリボン(GNR)は、高いキャリア輸送特性とバンドギャップを持つため、次世代の電子デバイスの根幹を担う半導体材料として、近年活発に研究がなされている。GNRは幅やサイズによって、物理化学的特性が大きく変化するため、目的とする物性を引き出すためには、GNRの分子構造を精密に制御することが必要である。一方、有機配位子と金属イオンとの自己集積によって構築される多孔性金属錯体(MOF)は、その構成要素を適切に選択することで、細孔構造を緻密にデザインすることが可能である。本年度は、MOFのナノ細孔内でピレンを重合することで、ジグザグエッジとアームチェアーエッジを有する混合エッジ型GNRの精密バルク合成に成功した。また、前年度合成したアームチェア型GNRと比較することで、エッジ構造がGNRのバルク特性に与える影響について初めて明らかにすることに成功した。これまでのGNRの合成方法は、ボトムアップ法とトップダウン法の二つに分類される。ボトムアップ法では、金属基板上における重合反応や、有機合成方法がある。これらは、あらかじめ構造が決められた分子をモノマーとして用いるため、構造が精密に制御されたGNRを合成することができる。しかし、反応が基板表面上のみに限られること、また、有機合成法では合成工程が多いため、大量合成は難しい。それに対して、リソグラフィー法に代表されるトップダウン法では、その手法の簡便さゆえ、スケールという観点からは魅力的である。しかし、得られるGNRのトポロジーは不均一になってしまうため、精密合成はできない。つまり、これまでのGNRの合成手法では、精密さとスケールの両方を満たすものはなかった。構造の精密性とスケールの両方を解決する、本手法によって、GNRの安定的なサンプル供給を可能になるため、GNRの産業利用に向けた新たな段階へ推し進めるのに多大な貢献が期待できる。
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