2019 Fiscal Year Research-status Report
原子層遷移金属ダイカルコゲナイドによる室温円偏光レーザー素子の創出
Project/Area Number |
19K15383
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
蒲 江 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00805765)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遷移金属ダイカルコゲナイド / バレー分極 / 電解質 / 発光デバイス / 光共振器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、次世代光量子通信を担う円偏光光源の創出である。具体的には、空間反転対称性が破れた原子層材料、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)、が有する特異な電子構造(バレー分極)を利用することで、室温において円偏光発光の電気的制御法を確立する。さらに、光共振器の導入を行うことで、最終的には室温円偏光レーザー素子の作製を目指す。 本研究目的に対し、本年度はTMDC発光素子を作製し(I)歪みによる室温円偏光発光制御と、(II)発光素子への共振器導入を具体的な項目として取り組んだ。以下にそれぞれの項目に関して研究実績の概要を示す。 (I)歪みによる室温円偏光発光制御 歪みを電流に垂直に導入することで誘起される有効磁場により、室温において円偏光制御可能な発光素子作製を行った。まず、化学成長したTMDC単層膜を可塑性基板上に転写し、柔軟性を有する発光素子を作製した。次に、一軸性歪みを印加しながら電流励起発光の円偏光発光特性を評価した。その結果、室温において円偏光発光が生成していることを明らかにし、理論計算の結果を基に円偏光発光制御の物理的メカニズムを解明した。最後、歪みを利用することで電気的に右巻き及び左巻き円偏光を切り替え可能な発光素子作製にも成功した。 (II)TMDC発光素子への共振器導入 レーザー発振を目指し、TMDC発光素子への共振器導入及び共振器発光の観測を行った。ミラー型共振器及び微小球を用いた共振器をTMDC単層膜上に作製し、光励起発光による評価を行った。その結果、微小球共振器を導入したTMDCでは発光の先鋭化が見られ、レーザー発振の前駆状態が明らかになった。特に、TMDC発光素子においても微小球共振器を導入することで、電流励起による共振器発光の観測にも成功した。これにより、今後は高電流密度やパルス駆動を導入することで電流励起によるレーザー発振が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、原子層遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)を用いた室温円偏光レーザー素子の創出である。具体的には、空間反転対称性の破れに起因するTMDCの特異な電子構造(バレー分極)と独自考案した電解質発光素子を組み合わせる。これに加え、歪みを用いたバレー分極制御を導入することで、室温において電気的に円偏光発光を制御する手法を確立する。さらに、光共振器の作製も行うことで、世界初となる電流励起円偏光レーザー発振の実現を目指す。 これに対し、本年度の目標はTMDCと電解質を用いた発光素子の組み合わせを基軸として、室温において電気的な円偏光発光生成とその制御法を確立することが当初の予定であった。実際にTMDCに歪みを印可可能な発光素子を作製し、その電流励起発光の円偏光特性を評価したところ室温円偏光発光の観測に成功した。これにより、理論計算との検証から歪みによる円偏光発光生成の原理を解明し、電気的に制御する手法も確立した。 以上の結果に加え、本年度はTMDC発光素子への光共振器導入も行い、実際に共振器発光素子の作製に成功した。これにより当初の予定より早く、電流励起によるレーザー発振の実現が期待でき、上述の円偏光制御法と組み合わせることで、本研究提案の最終目標である室温円偏光レーザーの創出が更に加速する見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果である、室温円偏光発光素子と共振器発光素子を組み合わせることで、今後は室温における円偏光レーザー素子の創出を試みる。 具体的にはまず、微小球共振器を導入した発光素子において、世界で初めて原子層遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)において電流励起レーザー発振を行う。特に、レーザー発振を行うためには十分な励起子密度を注入する必要があり、素子のパルス駆動等を活用することで、TMDC発光素子への高電流密度注入を試みる。さらに、計算シミュレーション等を利用して共振器構造の最適化を行い、より低電圧・低電流密度でのレーザー発振も狙う。 次に、共振器発光素子を可塑基板上に作製し、歪みを印可可能なレーザー素子の実現を行う。特に、本年度の成果として柔軟な基板上に素子作製する技術を構築しており、微小球を素子上に積層するのみで作製可能となる。基板がかわることでレーザー発振の最適条件が変化すると考えられ、適宜条件出しや素子性能のフィードバックを通して、柔軟な基板上において電流励起によるレーザー発振を目指す。 最後、柔軟な基板上で歪みを印可しながらレーザー素子の円偏光発光特性評価を行う。室温での円偏光発光が弱い場合は低温実験等で特性解明を行ってから、室温での円偏光レーザー発振を目指す。歪みによりレーザー発振特性が劇的に劣化する場合は、共振器部分のみ歪みの影響を軽減可能な素子構造の導入も検討する。
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Research Products
(26 results)
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[Presentation] Interface electroluminescence from WS2/WSe2 in-plane heterostructures2019
Author(s)
Naoki Wada, Jiang Pu, Wenjin Zhang, Zheng Liu, Hirofumi Matsuoka, Kazunari Matsuda, Yusuke Nakanishi, Yutaka Maniwa, Yuhei Miyauchi, Taishi Takenobu, Yasumitsu Miyata
Organizer
The Fullerenes, Nanotubes and Graphene Symposium
Int'l Joint Research
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