2020 Fiscal Year Research-status Report
原子層遷移金属ダイカルコゲナイドによる室温円偏光レーザー素子の創出
Project/Area Number |
19K15383
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
蒲 江 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00805765)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遷移金属ダイカルコゲナイド / バレー分極 / 電解質 / ヘテロ接合 / 光共振器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、次世代光量子通信を担う円偏光光源の創出である。具体的には、空間反転対称性が破れた原子層物質、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)、が有する特異な電子構造(バレー分極)を利用することで、室温において円偏光発光の電気的制御法を確立する。さらに、光共振器の導入を行うことで、最終的には室温円偏光レーザー素子の作製を目指す。 本研究目的に対し、本年度はTMDCヘテロ構造を用いた発光素子を作製し(I)ヘテロ界面歪みによる高効率な室温円偏光発光の生成・制御と、(II)光共振器導入による励起子-ポラリトン発光観測の2項目について取り組んだ。以下にそれぞれの項目に関して研究実績の概要を示す。 (I)ヘテロ接合を用いた室温円偏光発光素子 まず化学成長したWS2/WSe2面内ヘテロ単層膜を用いて電解質発光素子を作製し、ヘテロ界面からの電流励起発光を直接観測した。次に、界面発光の円偏光分解発光分光を測定したところ、室温において10%以上の高い円偏光分極が観測された。最後、ヘテロ界面の原子配列を電子顕微鏡で評価した結果、界面歪みが室温円偏光発光生成の起源であると明らかになった。本手法により、化学合成による大面積化やパターニングも可能となり、高効率なTMDC円偏光発光素子応用が期待できる。 (II)光共振器による励起子-ポラリトン発光の観測 室温円偏光レーザー発振を目指し、光共振器を導入して励起子-ポラリトン発光観測を行った。励起子-ポラリトンはバレー分極(円偏光)を維持したまま、極めて閾値の低いレーザー発振が期待されている。そこで、電解質発光素子にミラー型共振器を作りこみ、光励起発光による角度分解分光評価を行った。その結果、励起子-ポラリトン発光特有の分散関係を室温で観測した。したがって、今後は本素子に高電流密度を誘起することで、電流励起による円偏光(ポラリトン)レーザー発振が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、原子層遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)を用いた室温円偏光レーザー素子の創出である。具体的には、空間反転対称性の破れに起因するTMDCの特異な電子構造(バレー分極)と独自考案した電解質発光素子を組み合わせる。これに加え、歪みを用いたバレー分極制御を導入することで、室温において電気的に円偏光発光を制御する手法を確立する。さらに、光共振器の導入も行うことで、世界初となる電流励起円偏光レーザー発振の実現を目指す。 これに対し、本年度の目標は、昨年度確立したバレー制御手法を用いて高性能な室温円偏光素子を作製し、光共振器の導入を行い電流励起による共振器発光観測が当初の予定であった。実際に、ヘテロ接合試料を導入することで、ヘテロ界面歪みに起因した高効率な室温円偏光発光素子の作製に成功した。これにより、外部からの応力印可なしに円偏光発光素子の作製が可能となり、化学合成の利点を活かした素子応用可能性が高まった。また、電解質発光素子に光共振器の作りこみも容易となり、室温において円偏光レーザー発振が期待できる励起子-ポラリトン発光の観測にも成功した。 以上の結果を踏まえ、来年度は本年度に確立した素子構造に高電流密度印可やパルス印可等の測定手法を組み合わせることで、本研究提案の目標である電流励起による室温円偏光レーザー発振の実現が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果である、高効率ヘテロ円偏光発光素子と光共振器による励起子-ポラリトン発光を組み合わせることで、今後は室温における円偏光レーザー素子の創出を試みる。 具体的にはまず、共振器を導入した電解質発光素子において、世界で初めて原子層TMDCにおいて電流励起レーザー発振を行う。特に、レーザー発振を行うためには十分な電流(励起子)密度を注入する必要があり、パルス測定等を活用することで、TMDC発光素子への高電流密度注入を試みる。さらに、デバイスシミュレーター等を利用して共振器構造の最適化を行い、より低電圧かつ低電流密度でのレーザー発振も狙う。 次に、歪み印可試料及びヘテロ接合試料と共振器発光素子を組み合わせ、歪みを利用した円偏光レーザー発振の実現を行う。円偏光レーザー発振は共振器媒質・設計や検出方法等の条件最適化が必須と考えられ、適宜条件出しや素子性能のフィードバックを通して、電流励起における発振特性の解明に取り組む。最後、高電流密度下においてレーザー素子の円偏光発光特性評価を行うことで、室温において円偏光レーザー発振を目指す。
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Research Products
(19 results)
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[Presentation] Air-Stable, Efficient Electron Doping of Monolayer MoS2 by Salt-Crown Ether Treatment2021
Author(s)
Hiroto Ogura, Masahiko Kaneda, Yusuke Nakanishi, Yoshiyuki Nonoguchi, Jiang Pu, Mari Ohfuchi, Toshifumi Irisawa, Hong En Lim, Takahiko Endo, Taishi Takenobu, Yasumitsu Miyata
Organizer
第60回フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウム
Int'l Joint Research
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[Presentation] Anomalous electroluminescence from WS2/WSe2 in-plane heterostructures2020
Author(s)
Naoki Wada, Jiang Pu, Tomoyuki Yamada, Wenjin Zhang, Zheng Liu, Yusuke Nakanishi, Yutaka Maniwa, Kazunari Matsuda, Yuhei Miyauchi, Taishi Takenobu, Yasumitsu Miyata
Organizer
第59回フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウム
Int'l Joint Research
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[Presentation] 原子層面内ヘテロ接合を用いた発光デバイス2020
Author(s)
蒲 江, Ming-Yang Li, Jing-Kai Huang, 和田 尚樹, 高口 裕平, Wenjin Zhang, 宮内 雄平, 松田 一成, 宮田 耕充, Lain-Jong Li, 竹延 大志
Organizer
応用物理学会
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