2019 Fiscal Year Research-status Report
熱光エネルギーの高度利用に向けたカーボンナノチューブの熱放射特性の完全解明
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19K15384
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西原 大志 京都大学, エネルギー理工学研究所, 特定助教 (80768672)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 熱放射 / 励起子 / 低次元半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、キャリアドープした単層カーボンナノチューブを用いて、量子多体効果が熱放射特性に及ぼす影響を解明し、1次元量子ナノ構造の熱光物性の理解を深め、量子効果を利用した熱放射光スペクトルの自在制御へと繋げることを目的としている。具体的には、(1)キャリア密度が決まった単一ナノチューブ試料の作製、(2)キャリアドープ・ナノチューブの熱光物性物理の解明、(3)1次元熱放射特性の包括的な理解とその機能的な制御原理の創出、について研究を行う。 令和1年度はまず、項目(1)の研究として、予め設計された電極間に単一半導体型のナノチューブを架橋成長させて、ゲート電圧印加によるキャリアドープが可能なナノチューブ電界効果トランジスタ(FET)構造を作製した。そして、様々なゲート電圧印加下で、ナノチューブのレイリー散乱、及びフォトルミネッセンス(PL)スペクトルの変化を詳細に調べた。これらのスペクトルはゲート電圧印加に伴うキャリアドープによって形状やピークエネルギー大きく変化し、特にその強度からキャリア密度の見積もりが可能であることを確認した。項目(2)に関して、作製したナノチューブFET構造をレーザー加熱が可能な真空チャンバーに設置し、レーザー強度で温度を、そしてゲート電圧でキャリア密度を調整しながら、ナノチューブからの熱放射を顕微観察で詳細に調べた。その結果、熱放射光強度はキャリアドープによって大きく変化することがわかり、電圧印加による熱放射スペクトルの制御が可能であることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、レイリー散乱、及びPLスペクトルから半導体型ナノチューブのドープキャリア密度を見積る手法を確立することができ、熱光物性を定量的に議論する土台が整った。さらに、熱放射スペクトルのキャリア、温度依存性から、特定の温度ではキャリアドープによって熱放射光強度が抑制されることを確認した。これは、ナノチューブの温度を保ったまま熱放射光強度を電圧印加でオン、オフできることを示唆しており、上記の項目(3)の「機能的な制御原理の創出」につながる成果となっている。本年度は、本研究で核となる実験結果が得られていることから、研究は順調に進んでいると判断し、「概ね順調」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
項目(1)と(2)については、予定していた実験はほぼ完了しており、項目(3)の指針となる実験結果が得られている。今後は、得られた実験結果の理論解析を行い、1次元半導体量子ナノ構造の熱光物性の定性的、定量的な理解を目指す。さらに、半導体型だけではなく、金属型ナノチューブを用いたFET構造も作製、その熱放射測定し、1次元熱放射特性を包括的に解明する。
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Causes of Carryover |
3月に参加予定していた学会が急遽中止となったため、繰り越しが生じた。繰り越し金は、必要な実験の継続に伴う物品等の購入、論文投稿および学会発表にかかる費用などに使用する予定である。
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