2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K15393
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
LIM HONGEN 首都大学東京, 理学研究科, 特任助教 (20794861)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 化学気相成長法 / 原子層物質 / 二次元材料 / 遷移金属ダイカルコゲナイト / 界面成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学気相法(通称CVD法)により、三次元固体の界面における二次元原子層物質の合成に初めて成功してきた。具体的には、金薄膜と絶縁体の酸化シリコン基板の界面を利用し、半導体遷移金属ダイカルコゲナイトの単層二硫化モリブデン(MoS2)膜を成長させた。断面透過型電子顕微鏡を用いて、界面にMoS2単層膜が存在すことが分かった。また、金の薄膜を成長後に除くことにより、金薄膜下に合成したMoS2膜を確認することができた。ラマン分光や蛍光測定の結果から、合成した試料が剥離したもの並みの品質と光学特性を持つことを示した。なお、成膜途中のMoS2グレインの分布により、原料が金薄膜の端から界面を拡散しながら浸透していく生成機構が示唆された。MoS2膜が金の下にできたため、金のパターンニングすることによって、決まった位置で自由に成長できる。更に、この合成法を活かして、新たなデバイス作製法を開発した。従来と異なり、先に電極を作成してから試料を合成することが可能になる。このプロセスにより、従来と比べて金属蒸着や有機レジスト洗浄の時により試料へのデメージやコンタミなどを避けることができる。本発見は、簡易な手法で原子層物質の位置制御合成からデバイス作製まで利用できると期待できる。本成果は、海外・国内の関連分野である国際会議(Graphene Week, RPGR、FNTG)で発表した。研究結果を論文にまとめ、ナノ材料分野の主要雑誌の一つである「Nanoscale」雑誌に採択され、掲載号の表紙としても選出されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は金属薄膜の端を利用した遷移金属ダイカルコゲナイトの成長法の開発を目指した研究内容を提案した。この端を利用した成長にも成功した一方で、研究の進展とともに新奇なバルク固体の界面における原子層物質の成長法を発見することができた。このような手法は従来の基板表面での合成とは大きく異なり、新たなデバイス構造や不安定な原子層の成長にきわめて有用であると期待される。そこで、金属・基板の組み合わせなど合成条件の探索を中心的に進めてきた。更に、新たなデバイス作製プロセスの開発と電界効果トランジスタ(FET)動作の実証まで達成することができた。以上の成果が論文掲載までいたったことより、本研究課題は計画以上進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では、MoS2の単層シートの成長に成功してきた。今後の研究の推進方策として、他によく使われているSe系やTe系のWSe2とMoTe2とWTe2などの成長も試していく。また、試料の均一性の向上とシートの層数制御に向けて、合成方法やプリカーサの原料を変えつづ、合成条件を改善する。具体的には、金の下に薄いMo膜(原子数個分)やモリブデン酸ナトリウムをあらかじめ蒸着してからカルコゲンと反応させることや、長時間の原料供給が可能な有機金属気相成長法を検討していく。合成したシートは、グレインサイズが小さいかつ結晶方位が揃っていないため、グレインバウンダリーや欠陥がたくさんできてしまい、電気輸送には不利という課題もある。この理由の一つとして、酸化シリカ(SiO2)基板の表面がダングリングボンドが多いため、多量の核が形成しやすいことが考えられる。この解決策として、二次元物質のグラファイトやボロンナイトライド(hBN)上で界面のエピタキシャル成長を行う。又、基板の前処理(加熱、UVオゾン照射や酸修理など)の効果も調べる。更に、作ったデバイスを改善するため、金を除去するプロセスの条件や金の厚みも検討する予定である。順調で進めていけば、その界面で原子層物質のヘテロシートが作れるかどうかことも検討していく。
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Causes of Carryover |
令和元年度に、シンポジウムにおいて発表する予定であったが、新型コロナウイルスの影響で、出張をキャンセルしたため、未使用額が生じた。このため、シンポジウムでの発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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Research Products
(6 results)