2020 Fiscal Year Research-status Report
高速イオン伝導が可能な電子-イオン混合伝導性有機材料の創成と伝導メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K15396
|
Research Institution | Tsuruoka National College of Technology |
Principal Investigator |
正村 亮 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (50757599)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | シングルイオン伝導性ポリマー / リチウムイオン伝導 / 酸化グラフェン / π共役系 / 混合伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電子伝導体であるπ共役系分子と、イオン伝導体であるイオン液体を精密に複合化させ、1種類の材料中で電子伝導とイオン伝導を同時に有する、「新規混合伝導性有機材料」の創成を行う。このような材料中では、電子・イオンそれぞれが独立した伝導性を示す、あるいはお互いが協同的な伝導性を示すことも考えられ、有機系電子デバイス設計において、極めて重要な知見となる。 2020年度は、新たな高イオン伝導性ポリマー開発に向けた基礎実験を行った。シングルイオン伝導性ポリマーのイオン伝導度の向上を目的として、シングルイオン伝導性ポリマーと、酸化グラフェン(GO)の複合膜を合成し、伝導度をはじめとした各種物性について検討した。 合成した複合膜は、インピーダンス測定による抵抗値測定、TG測定、DSC測定の各測定を行った。30℃~90℃の温度範囲での伝導度測定の結果より、GOが5%程度含有された複合膜において、最も伝導度が高い結果が出た。この原因を究明するため、TGおよびDSCによる熱分析を行った。その結果、TG測定においては、100℃以下で分解等の挙動が見られず、インピーダンス測定の温度範囲で複合膜は安定であることが分かった。さらにDSC測定では、シングルイオン伝導性ポリマーのみの場合と、GOを添加した場合において、ともに35℃~40℃付近にガラス転移点が観測され、大きな違いが見られなかった。すなわち、GOの添加による伝導度向上の要因は、GOの可塑剤としての効果に起因するものではなく、GO自体がイオン伝導性に寄与するものであることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究結果の、シングルイオン伝導性ポリマーにおけるイオン伝導性向上に関する知見から、今後の研究の全体の方向性が得られたた。そのため、全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度の結果をもとに、ブロックポリマーを含めた、ポリマー構造(分子構造)の最適化を検討する。さらに、複合材料として、GOとの複合膜を合成するほか、π共役系分子をはじめとした、電子(ホール)伝導材料との複合化も検討し、混合伝導性に関する物性測定を行う。合成した材料については、電解質膜のほか、セパレーターや電極保護膜としての利用を検討し、二次電池や燃料電池材料としての応用を目指す。
|
Causes of Carryover |
予定していた国際学会2件と国内出張が全てキャンセルとなった。そのため、出張旅費として予定していた額が余った。国際学会2件は次年度へ延期となったため、開催されれば、旅費として使用予定である。また、一部、実験内容を変更予定のため、その実験で用いる器具の購入に使用予定である。
|
Research Products
(4 results)