2019 Fiscal Year Research-status Report
活性酸素種分解性ポリペプチドによるオルガネラ選択的バイオ医薬品デリバリー
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19K15401
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河崎 陸 広島大学, 工学研究科, 助教 (40836194)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ペプチド / 刺激応答性ナノ粒子 / 活性酸素種 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究開始1年目である本年度は基盤となるペプチドナノ会合体の作製に関する検討を主に行ってきた。化学酵素重合法によって合成したオリゴペプチド誘導体は静電相互作用を駆動力とすることで、水中で安定なナノ会合体を形成し、その粒子径は100nm程度であった。この会合体は中空構造を有し、その内部にタンパク質をその活性を保持した状態で安定に複合化した。それだけでなく、この会合体表面上にアルキンーアジドのクリックケミストリーによって、種々の膜透過ペプチドを提示できることが明らかとなった。この膜透過ペプチドを提示した会合体は植物細胞内へとタンパク質をその活性を保持した状態で送達しえることが明らかとなった。そのため、本システムの最適化によって、オルガネラの機能化へと期待できる結果が得られている。 その一方で、活性酸素種応答性部位の合成及び機能評価について、並行して行った。プロリンを主成分とするオリゴペプチドを液相合成法によって合成した。合成したオリゴペプチドは高濃度の活性酸素種に応答することでその主鎖骨格が分解することを明らかとした。このときの活性酸素種濃度は極めて高い活性酸素種濃度であったものの、光合成を行っているときの葉緑体と同程度であったことから、光合成に応答したシステムの構築に有用であることが示唆される。それだけでなく、本システムは水中で疎水性相互作用により、直径100 nm程度の会合体を形成し、作製したナノ粒子は活性酸素種に応答することで分解し、分解に基づく制御放出が可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた通り、ペプチドを用いたナノ会合体の作製に成功している。また初年度中において、計画していた通り、直鎖型や多分岐型の機能性オリゴペプチド の合成に成功し、その基礎物性については質量分析や核磁気共鳴法の利用により詳細に検討し、明らかとした。これらペプチドを用いて、作製したナノ会合体の基礎物性については分光学的手法や顕微鏡技術などの多角的な視点によって、その大部分を明らかとしている。それだけでなく、作製したナノ会合体の機能化、タンパク質や核酸などの送達薬剤の複合化能など、バイオ機能評価も蛍光相関法など種々の分光技術によって明らかとしており、送達技術として期待できる結果が得られつつある。また当初の予定通り、オルガネラ選択性を高めるために必要となる活性酸素種応答部位のスクリーニング及び、応答性に関する検討も詳細かつ多角的に進められている。特に天然アミノ酸の一つであるプロリンを用いた応答性部位は低濃度の活性酸素種では一切応答性を示さない一方、高濃度の活性酸素種でのみ応答性を実現し、高い葉緑体選択性への期待ができる結果を示している。 また予期せず、合成したペプチドがナノ会合体を形成したため、その基礎的な物性についても検討し、有益な結果も得られつつある。また本成果について、特許出願(1件)、学会における発表も行なっている。 以上の事柄を総合的に考慮して、本プロジェクトは概ね順調に進展しているものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は引き続き、上記システムの最適化を中心に行う予定である。具体的には、ナノ会合体を用いたタンパク質送達の最適化及び、送達タンパク質の機能による細胞機能制御について行う。そのために、ナノ粒子表面へと提示する機能性ペプチド や標的化因子の提示や修飾率の最適化、粒子径制御などに取り組む必要があると考えている。これに併せて、送達効率の一般化を目指し、得られたナノ粒子の詳細な構造解析を行う。具体的には多角度散乱測定や放射光X線を用いた会合体の構造解析など、得られたナノ粒子の詳細なキャラクタリゼーションについても並行して行う必要があると考えている。 ここで2019年度の10月より、申請者の所属が変更されたがオルガネラを標的化、薬剤を送達するシステムの構築については引き続き行う予定である。特に動物細胞に対するミトコンドリアを標的化した抗がん剤送達システムの開発及び、タンパク質送達システムの構築についても並行して検討を行う予定である。自己組織化やエマルジョンなどボトムアップ手法を用いることで、機能性高分子を用いたナノ粒子を作製し、パイロット分子の修飾によって、ミトコンドリアへの集積化を実現させる。ここで作製したナノ粒子のキャラクタリゼーションや種々のバイオ機能については、これまでに行ってきた手法と同様の手法を用いて、詳細かつ多角的な検討を行う予定である。 また、まとまった成果が得られた場合、学会やSCI論文にて外部へと積極的に発信していく。
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Research Products
(14 results)