2020 Fiscal Year Research-status Report
活性酸素種分解性ポリペプチドによるオルガネラ選択的バイオ医薬品デリバリー
Project/Area Number |
19K15401
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河崎 陸 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (40836194)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 刺激応答性ナノ材料 / ドラッグデリバリー / オルガネラ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は2019年度に合成した二分岐型ポリペプチドを基盤材料として用いることで作製に成功したポリイオンコンプレックスベシクル(PICsome)によるリボヌクレオタンパク質(RNP)の植物カルスへの送達及び、送達RNPによるゲノム編集について検討を行った。植物カルスへとモデルタンパク質である黄色蛍光タンパク質(Citrine)や蛍光標識したRNPをバキュームポンプ法により導入した。その結果、共焦点レーザー顕微鏡観察により、細胞質にこれらタンパク質の輝度が観測され、確かに細胞質へと送達可能であることが示された。最後にゲノム編集効率について、次世代シークエンサーを用いて評価したところ、わずかではあるものの、ターゲットシークエンス上に変異が誘導されていることが確認され、その効率は膜透過性ペプチドを提示した系において、最も高い値を示した。すなわち、膜透過後、効率的にRNPが核へと移行し、ゲノム編集を行っていることを意味している。本成果については特許を申請し、現在論文投稿中である。 昨年度発見したオリゴプロリンからなるペプチドが形成するナノ会合体に関しては既にSCI論文に受理されている。具体的な成果として、有機色素を含有したナノ会合体はシロイヌナズナの本葉において、効率的に細胞内へと取り込まれるだけでなく、光合成によって生成する活性酸素に応答して、内包した色素を放出できることを明らかとした。それだけでなく、本システムはレーザー照射による局所的な放出への応用も可能であることを示した。 この他に温度応答性多糖を用い、ミトコンドリアの熱微小環境に選択的に応答することでることで動物細胞において中分子薬剤(ポルフィリン)を送達できることも明らかとし、本成果についても、SCI論文に受理されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に行った基礎的な検討及び知見を元に当初の目的であったオルガネラ(核・ミトコンドリア・葉緑体)それぞれに対して選択的な送達を実現させるナノプラットフォームの構築に成功しており、それぞれ良好な結果が得られている。得られた成果の一部は特許出願による権利化(2件)やSCI論文化(2件+1件投稿中)と順調に成果をまとめることができているものと認識している。中でも、ミトコンドリアや葉緑体を標的化した刺激応答性ナノ材料についてはSCI論文へと投稿し、その一方はその学術的価値が評価され表紙に採用されている。 またPICsomeを利用したRNP送達についても、効率的にRNPを細胞質や核内部へと送達できるだけでなく、次世代シークエンサーを用いたゲノム編集効率の評価により、植物カルスに対して効率的にゲノム編集が可能であることがわかってきた。この成果については、現在論文に投稿中である。 以上の事柄を総合的に考慮して、本プロジェクトは概ね順調に進展しているものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2021年度は上記成果の論文化を完了させることに重点をおいて進める予定である。それと同時に上記で開発したミトコンドリアや葉緑体への送達基盤によって得られた知見をもとに新たな送達基盤を開発あるいは機能を組み合わせることでバイオ医薬品のミトコンドリアへの送達に注力する。 特に2019年度の10月に申請者の所属が変更されたため、動物細胞のミトコンドリアへのタンパク質をはじめとしたバイオ医薬品の送達効率の向上を目指す。得られた粒子のキャラクタリゼーションについては、これまでに確立した手法により系統的に評価を行うことでバイオ機能だけでなく、粒子の性能を正しく解析、評価する。またバイオ機能についてもこれまでに確立した手法を用いることで確実に成果を残していく。 まとまった成果についてはこれまでと同様、学会やSCI論文により外部へと積極的に発信していく。
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