2020 Fiscal Year Research-status Report
原子層半導体のボトムアップ成長によるラテラルホモ接合の実現
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19K15403
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
岡田 光博 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (10824302)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遷移金属ダイカルコゲナイド / ガスソースCVD / ラテラルホモ接合 / ドーピング |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、引き続き単原子層p-n接合のより詳細な解析と、論文投稿に向けた準備、並びに気体原料を用いた成長の高度化について研究を行った。 原子層MoS2 p-nダイオードについては、COVID-19の蔓延による各種測定の遅延が生じたものの、無事にケルビンプローブフォース顕微鏡を用いた結晶の仕事関数分布測定や放射光を用いた化学状態分析など、結晶の局所的なp型化の直接的な証拠収集並びに物性測定に関するデータ取得を完了し、論文投稿に向けた準備を進めている。また、本内容について、第59回フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウムにてポスター発表を行い若手奨励賞を受賞するなど、外部からも評価を受けた。 また、気体原料を用いた成長については、その成長技術を更に進めるべく、アルカリ金属フリー環境下において、結晶成長速度論的な観点による成長条件最適化を施し、WS2の大面積化・高品質化を図る研究を行った。タングステン源の希釈・成長温度の向上を組み合わせることで、アルカリ金属フリー環境下の気体原料を用いたWS2成長で世界で初めてマイクロメートルスケールの結晶を得ることに成功した。また、同時に、固体原料とは異なり原料供給がマスフローコントローラによる制御である、すなわち原料供給速度が温度依存しない性質を活かし、その結晶成長速度論的な解析も行うなど、気体原料を用いたWS2成長について、重要な知見を得ることができたと考えている。以上の結果は、2020 International Coreference on Solid State Devices and Materialsにて登壇・発表を行うとともに、2021年にJapanese Journal of Applied Physics誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ボトムアップ成長によるドーピング技術開発については、その評価技術(ケルビンプローブフォース顕微鏡による仕事関数や1次元p-n接合の空乏層幅直接観察、放射光を用いた化学状態分析など)の開発・実施を進めることができ、今後多様なラテラルホモ接合を作製した際に必要な技術を手に入れることができたと考えている。また、論文投稿には至らなかったものの、フラーレン・ナノチューブ・グラフェン学会より若手奨励賞を受賞した点からも、十分に高いレベルで研究を遂行し、そして評価される段階まで進展しているといえる。以上より、NbドープによるMoS2 p-nダイオード形成の研究は、おおむね順調に進行していると判断した。 気体原料を用いた成長においても、アルカリ金属フリー下での成長に進展が見られ、マイクロメートルスケールの結晶を得ることができた点は評価に値する。得られた結晶の物性も固体原料で得られたそれとそん色なく、今後の大面積基板成長技術への発展が期待できる。また、同時に結晶成長速度論に関する核形成・成長の活性化エネルギーを求められた点は大きく、これらは結晶成長の学術的な観点としての重要性はもちろん、今後更に成長条件を検討するうえで必要不可欠なパラメータである。このため、気体原料を用いた成長技術開発においても、今後の発展に必須となる技術・パラメータの取得に成功し、そして論文掲載に至ったといえ、此方についてもおおむね順調に進展していると判断した。 以上より本研究については、今後の研究に必要な技術・パラメータの取得といった基礎的な部分はもちろん、研究を纏めて学会発表・受賞・論文掲載といったアウトプットの段階まで進められており、全体としておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度であるため、より研究成果の対外発信を強化しつつ、全体の総仕上げとなる仕上げとなる研究を進めたい。 まず、Nbドープによる単層MoS2 p-nダイオードの実現については、論文掲載を目標とする。こちらについてはデータ収集は終えており、論文執筆も最終段階の状況であるため、近日中に投稿できると考えている。更に、可能であれば得られた結晶のエレクトロルミネッセンス観測など、単層TMDラテラル接合構造ならではの物性についても、さらなる探索を進めていきたい。 また、このMoS2に局所的にNb原子をドープさせる技術の研究を進めるにあたり、NbS2/MoS2ファンデルワールスヘテロ積層構造の成長が可能であることも分かってきた。MoS2が半導体なのに対し、NbS2は比較的仕事関数が大きい(5-6 eV)の金属であり、この界面にはバリアが0.6-1.6 eV程のショットキー障壁が形成される。すなわち、このファンデルワールスヘテロ積層構造はショットキーバリアダイオードとして動作する。これについても、同じくデータの解析と予稿の執筆を進めており、近日中に結果をまとめ学会発表・誌上掲載まで持っていくことをを目標としたい。 気体原料を用いた成長についてもさらなる条件検討を進め、より巨大・高品質な結晶を得られる成長条件を探索していきたいと考えている。これについては、先述した成長に関する活性化エネルギーを用いた考察がポイントとなると考えている。同時に可能であれば、得られた結晶の物性の均一性などの大面積成長で問題となる点の洗い出しや、Ramanや発光分光等の基礎光学特性と、トランジスタ特性の関連付けを行うなど、今後高品質なラテラルホモ接合の形成と、その発展に必要不可欠な技術開発を進めていきたい。
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Research Products
(7 results)