2019 Fiscal Year Research-status Report
機能性ペプチドを修飾したナノミセルによる植物ミトコンドリアへの高効率な遺伝子導入
Project/Area Number |
19K15411
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮本 昂明 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員 (20804040)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遺伝子送達ペプチド / エンドソーム脱出 / 二重修飾ミセル / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,機能性ペプチドを利用することにより,植物細胞が持つ種々の障壁を克服し,ミトコンドリアへの高効率な遺伝子導入を達成することである。当該年度は下記項目に取り組んだ。 (1)エンドサイトーシスにより細胞内へ取り込まれた複合体の液胞への移行を回避するため,細胞膜透過配列(dTat),リンカー(Sar),およびエンドソーム脱出配列(EED4)で構成される新規人工ペプチド(dTat-Sar-EED4)を開発した。既存のペプチド/DNA複合体とdTat-Sar-EED4を組み合わせた遺伝子送達システムを構築し,シロイヌナズナおよびイネのカルス細胞への遺伝子導入を検討した。その結果,dTat-Sar-EED4はエンドサイトーシスによる複合体の細胞内取り込みと細胞質への移行を促進し,核への遺伝子導入効率を有意に向上させることが明らかとなった。一方で,dTat-Sar-EED4が比較的高い細胞毒性を示したため,種々の細胞膜透過配列とエンドソーム脱出配列を表面修飾した二重修飾ペプチド/DNA複合体(ミセル)を新しい送達システムとして開発した。シロイヌナズナの芽生えを用いた検討の結果,二重修飾ミセルはほとんど細胞毒性を示さない一方で,細胞質への移行効率が有意に増大し,その核への遺伝子導入効率は細胞透過配列のみを修飾したミセルと比較して2倍程度向上することが示された。 (2)植物の細胞壁は,セルロース微繊維のネットワーク構造により,~50 nm以上の外来分子の侵入を阻んでいるが,遺伝子導入に用いるペプチド/DNA複合体は平均直径が~100 nm程度であるため,細胞壁を効率的に透過できていないと予想される。そこで,細胞壁の構造を乱し,複合体の透過効率を向上させる目的で双性イオン型ペプチドを開発した。双性イオン型ペプチドは植物の細胞壁にポアを形成するが,細胞毒性は低いことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り,これまでに新規人工ペプチドおよび二重修飾ミセルの開発に成功し,植物への効率的な遺伝子導入を妨げていた液胞での分解の克服に目処をつけることが出来た。また,植物細胞壁を弛緩させる双性イオン型ペプチドの開発にも成功しており,植物の持つ種々の障壁を着実に克服しつつある。以上から,研究は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでに開発した二重修飾ミセルと双性イオン型ペプチドを組合わせることにより,遺伝子導入効率のさらなる向上を目指す。具体的には,双性イオン型ペプチドを前処理した植物において,ミセルの細胞取込みと遺伝子導入効率が向上するかを検証する。これまでの研究から,細胞壁は植物への遺伝子導入における最大の障壁と予想されるため,その克服により導入効率の劇的な改善が期待される。また,これまで核を対象に遺伝子導入を検討してきたが,細胞壁の克服が達成された段階で,ミトコンドリアを標的とした遺伝子導入を検討する。
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Causes of Carryover |
当初計画では,ミセルへ修飾する機能性ペプチドを多数検討する予定であったが,予想よりも早く有効なペプチドを選抜することに成功したため,ペプチド合成に必要なコストが想定よりも低くなったことが,次年度使用額が発生した理由である。この使用額は,次年度において,細胞壁透過を目論んだ種々の双性イオン型ペプチドの合成に必要な試薬等に充てる予定である。
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Research Products
(10 results)