2019 Fiscal Year Research-status Report
大気圧プラズマジェットの高精度位置決めによる自由曲面微細加工法
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19K15419
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
中澤 謙太 静岡大学, 工学部, 助教 (50824520)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 大気圧プラズマ / 位置決め / MEMS / マイクロオプティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では局在化した大気圧プラズマジェットを走査型プローブ顕微鏡技術を用いて高精度位置決めし,エッチングすることにより実現する自由曲面微細加工法の開発を実施している.2019年度は主に加工装置を開発した.加工装置は位置決め機構と大気圧プラズマ生成機構から構成される.大気圧プラズマジェットを局在化するためのノズルを位置決め用のプローブとして用いた.位置決めのためにノズルとエッチング試料との相互力であるシェアフォースを検出する機構を構築した.この位置決め機構は走査型プローブ顕微鏡や精密3次元形状測定器で用いられる.位置決め機構は,ノズル励振アクチュエータ,レーザー光源,2分割フォトダイオード,変位拡大型圧電アクチュエータ,2次元ステッピングモーター型ステージを用いて構築した.共振周波数で励振されたノズルの影を2分割フォトダイオードに投影し,ノズル先端とエッチング試料を変位拡大型圧電アクチュエータを用いて近接させた.近接させた時のノズルの振動振幅の減衰率を計測し,任意の減衰率になった場合を原点とした.エッチング機構は,大気圧プラズマジェットを局在化するノズル,プラズマ生成用高電圧電極と電源,マスフローコントローラを用いて構築した.また,位置決め機構と大気圧プラズマ生成機構を制御するためのプログラムをLabVIEWを用いて開発した.そのプログラムにより,初期設定以外は全自動で位置決め工程とエッチング工程を行うことを可能とした.開発した加工装置と制御プログラムを用いて,位置決め分解能の計測,エッチング分解能,エッチングレートなどの基礎的な実験データの取得を試みた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,2019年度に加工装置の構築,2020年度に開発した加工装置を用いて自由曲面加工へ展開することを目標とした.MEMSなどのマイクロマシンやマイクロオプティクスへの応用を見据え,マイクロメートル程度の平面加工分解能,サブミクロンの深さ加工分解能,ミリメートル程度の加工範囲を達成することを設計パラメータとした.ノズルはガラスの熱引き加工により製作し,その後ノズル直径を切断や熱加工によってノズルの開口直径を調整した.大気圧プラズマジェットのエッチング分解能はノズルの開口直径と同程度となることを実験的に確認した.また,平面加工分解能とエッチングレートのエッチング試料とノズルの間隔への依存性を検討した.エッチング試料とノズル間隔が数マイクロメートル程度の範囲内である場合に,それらのパラメータへの依存性が小さいことが分かった.その範囲への位置決め分解能を開発した位置決め機構では十分に満たしていることが分かった.さらに,位置決め工程とエッチング工程を全自動で繰り返すことを可能にすることができた.これらの結果は2019年度の成果であり,加工装置の構築といった目的の大部分を達成できた.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は主に以下の3項目に関して研究を実施する. (1)基本的なパラメータである,エッチング分解能やエッチングレートの再現性の向上を行う.現在はエッチング試料にポリマーを用いているため,大気圧プラズマジェットを照射すると帯電するといった問題がある.帯電するとノズルの位置決めが不安定になり,エッチングパラメータへ大きな影響を与える.帯電除去装置を導入し,実験を繰り返すことで再現性を向上させる. (2)自由曲面加工のためのプログラム開発を行う.現在のプログラムでは,線などの基本的な加工のみ可能である.本研究では,位置決め工程・加工工程が特殊であるため,一般的なプログラムを応用することは困難である.そのため,独自の3次元走査プログラムを開発する. (3)現在はポリマーをエッチング対象としているため,酸素系の活性種によりエッチングしている.しかし,MEMSやマイクロオプティクスへ応用する場合にはフッ素系の活性種を生成する必要がある.しかし,ノズルがガラスであるため,ノズルもエッチングされる.そのため,耐エッチング性を有するノズルの開発を行う.
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Research Products
(2 results)