2020 Fiscal Year Research-status Report
量子センサを用いた光熱マイクロバブルの実時間3次元温度測定
Project/Area Number |
19K15422
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
西村 勇姿 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, 博士研究員(任常) (00824434)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノダイヤ / 温度 / 対流 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の食品および医療分野において,アレルギー検査やDNA検査の迅速かつ簡便な検査方法が求められている.液中の物質を集合化するフォトサーマルフルイディクス技術は光で濃縮することにより反応時間を劇的に短縮することができるため,これらの問題を解決する重要なツールとて近年盛んに研究が行われている.申請者はこれまで光誘起バブルによるタンパク質などの濃縮やDNAハイブリダイゼーションの光加速によってこの新しい分野を切り拓いてきたが,マイクロ領域で発生する対流現象などの熱流体力学的機構は未だ解明されていない.この複雑な現象を記述する上で最も基本的なパラメータは温度であることから,本研究では電子スピン共鳴による温度イメージング技術を用いて光熱対流発生時の温度場を正確に計測し,得られた温度分布情報をもとに熱対流やバブル発生機構の解明を行うのが目的である. 我々はこれまでに,独自に構築した共焦点光学顕微鏡にマイクロ波照射系を組み合わせた光検出電子スピン共鳴(ODMR)装置を用いて蛍光ナノダイヤモンドの量子センシングを行ってきた.昨年度はCCDカメラにより得られた蛍光画像から電子スピン共鳴を検出することも同時に可能にするシステムの開発に取り組んだが,本年度はそれらの更なる改良を行った.共焦点検出と広視野検出を使用して得られたODMRスペクトルを同じ蛍光ナノダイヤモンドで比較したところ,ODMRは広視野検出よりも共焦点検出の方が深いことがわかった.広視野ODMR検出に対するピクセル飽和とND位置ドリフトの影響を調べ,測定アーチファクトと感度劣化を調べた.このシステムの特性評価から測定パラメータを調整し,生きているHeLa細胞内の複数の蛍光ナノダイヤモンドのODMR測定を行った.外部温度変化は共焦点検出と同等の精度で検出できるが,温度精度をさらに向上させる必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は所属機関の変更があったために移動先で新たに環境整備を行った.昨年度は蛍光ナノダイヤモンドによる多点同時温度測定方法のシステム開発を行ったが,光誘起対流が起こるタイムスケールでの温度計測には至っていない.そのため,システムの改良を行い,生きた接着細胞の細胞内温度測定に取り組んだ.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は光誘起バブル発生のための近赤外レーザーを既存光学系に導入し,金スパッタリングを施したカバーガラスにレーザーを照射することで実際にバブルを発生させる.光熱効果により生じた流れが定常状態となったときのワイドフィールドODMR測定を行い,流れ場全体の温度分布を測定する.得られた温度情報をもとに数値シミュレーションを行い,流速プロファイルをフィードバックすることでレーザー照射によりどのような流れ場が生じうるかを検討する.
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Causes of Carryover |
所属機関の変更があり,新しい所属機関の既存設備等を考慮してから機器類の購入を行ったため.次年度は光学部品を購入予定である.光学部品には,既存光学顕微鏡システムの改変のために必要な光学素子・光学ステージ,また,高倍率対物レンズなどの光学消耗品を含む.
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