2020 Fiscal Year Annual Research Report
液体有機半導体とエラストマーとを融合した伸縮性機能薄膜の開発と電界発光評価
Project/Area Number |
19K15424
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
笠原 崇史 法政大学, 理工学部, 講師 (10707714)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 液体有機半導体 / 有機EL / 伸縮性エレクトロニクス / 電子注入層 |
Outline of Annual Research Achievements |
IoT社会に対応する次世代ディスプレイの創生に向け、伸縮性機能薄膜と、当該材料を用いた有機ELデバイスを、ナノ・マイクロデバイス設計と電子物性論の観点から開発した。 (1)伸縮有機発光材料の調製:近年新たなエレクトロニクス材料として注目されている、常温で液状のピレン誘導体(発光性の液体有機半導体分子)と、エラストマー材料とを有機溶媒に均一に溶解することでインクを調製し、有機溶媒のみを蒸発除去することにより液状ピレン誘導体をエラストマーに分散させることに成功した。さらに、当該材料は母材のエラストマー材料が本来持つ伸縮性を保持したまま、約3倍に伸長することが観測された。 (2)伸縮性薄膜を備えた有機EL素子の作製:真空紫外線を用いた親水化処理技術とスピンコート法を用いることで、上述のインクを基板上に薄膜形成できることが明らかになった。さらに、2枚の透明電極(ITO)付きガラス基板で当該薄膜を挟んだ簡易有機EL素子を作製した結果、電圧印加により電界発光(EL)が観測された。得られたELスペクトルは液状ピレン誘導体由来のものであることも示された。 (3)液状ピレン誘導体の高輝度化検討:上記素子はEL発光のために高い駆動電圧(直流電圧100V程度)と低輝度が課題となっていた。そこで、まずは液状ピレン誘導体へのキャリア注入を促進するために、エネルギー準位および大気安定性の観点から酸化亜鉛ナノ粒子(ZnO NPs)からなる電子注入層を検討した。その結果、ITO陽極/液状ピレン誘導体/ZnO NPs/ITO陰極の素子において、ZnOを用いない素子に比べて1桁以上の電流密度および輝度の向上に成功した。 本研究課題により得られた成果は、独創的なウェアラブルディスプレイへの応用だけではなく、新たな有機デバイスの発展につながることが期待される。
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