2020 Fiscal Year Research-status Report
トポロジーを利用した高易動度型高性能熱電物質の理論設計
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19K15436
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
臼井 秀知 島根大学, 学術研究院理工学系, 助教 (10722902)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 熱電効果 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
温度差による発電である熱電発電は、温度差が存在するあらゆる場所で使用できる特徴を持つ。本研究では、低易動度を改善する熱電物質の理論提案を目指し、三角格子などの結晶構造を持つ物質を対象とした理論研究を行っている。手法として第一原理計算とモデル計算を用いて解析を行う。本年度では、熱電物質の性能を表す無次元性能指数ZTが1を超える1-2-2系ジントル相化合物とNaCoO2類似物質、また、トポロジカル物質として知られるEuSn2As2などの化合物に対して第一原理計算による理論研究を行った。 (1) 1-2-2系ジントル相化合物と呼ばれる同一の結晶構造を持つが元素が異なる20種類以上の化合物に対して第一原理計算を行い、熱電性能の評価と物質依存性の理解を行った。本成果はJournal of the Physical Society of Japan誌に掲載された。 (2) 大きな熱電性能を持つNaCoO2の類似物質であるAgCoO2を対象に第一原理計算を行い、熱電性能評価を行った。本物質の特徴として、NaCoO2ではab軸に大きな電気伝導を示すが、本物質はその特異な電子状態によりc軸方向の熱電性能が大きくなる傾向があることがわかった。本研究は日本物理学会で発表しており、現在論文を執筆中である。 (3) トポロジカル物質として知られているEuIn2As2のAsを一部Pに置換したEuIn2(As1-xPx)2について第一原理計算を行い、バンド構造と熱電性能の関係について研究を行った。第一原理計算による解析結果と実験結果がよく一致し、理論により実験結果を説明することに成功した。また、トポロジカル物質であるSrSn2As2の類似物質であるLiSn2As2のAsの一部をPに置換した物質に関しても研究を行い、複雑な電子状態を持つことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで様々な熱電物質について理論的解析を行うことで、高性能熱電物質となりうる候補物質を多々得ることができた。これらの物質を候補として、電力因子だけでなく熱伝導率の評価も行うことで、大きな熱電性能を持つ物質の理論提案を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果から得られた大きな電力因子を持ちうる物質群に対して、第一原理計算による熱伝導率の計算を行う。これにより、無次元性能指数が大きな具体的な化合物を理論的に提案する。
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Causes of Carryover |
コロナ渦による国際会議、国内学会の中止により旅費が使用できなかったため、次年度使用額が生じた。本年度も多くの学会がオンライン化を予定しているため、代替としてコンピュータ等の物品購入を予定している。
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Research Products
(4 results)