2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K15441
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
大久 哲 山形大学, 有機材料システム研究推進本部, 助教 (90646407)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薄膜積層構造の電気化学安定性評価 / 有機ELデバイス / 中性子反射率 / その場測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、有機ELデバイスを駆動させながら中性子反射率法を測定する装置の組み上げおよび測定するデバイスの設計開発を行い、実際に測定を行った。一通り測定を行うことで、課題の抽出を行うことができた。課題として、組み上げた装置の内部を非活性雰囲気にすること、素子のセッティング方法、測定するデバイスの構造の問題がある事が挙げられた。 具体的には、中性子反射率法を測定するためにJ-PARCの利用申請を行い、採択されマシンタイムを得た。マシンタイムまでに測定装置の組み上げなどの準備を行い、2020年1月に測定を行った。装置の組み上げ上の課題は、有機EL素子は空気中の酸素や水分に弱いため、非活性雰囲気に密封する測定用セルを用意することであった。今回、中性子を通すアルミの窓材を持つ測定セルを用意し、その中を窒素フローすることで非活性雰囲気とした。有機ELデバイスは電気を通す必要があるため、セルにはフィードスルーをとりつけた。セル内部にデバイスを固定し外部電源を使って電気を通した。駆動中の電圧、電流値、発光スペクトル、発光強度をモニターできるようにした。 測定するデバイスの構造として、有機ELデバイスの膜厚が厚すぎると中性子の干渉縞の周期が短くなり変化が観測しにくいという課題があった。そこでAl電極の膜厚を通常の100nmから20nmとし、干渉縞の周期が短くならないようにした。 これらの装置とデバイスを使い、実際に測定を行った。測定をすることはできたが、完全な非活性雰囲気とすることができておらず、酸素や水分による電極の劣化が早く起こってしまい、今回、目的とする駆動中の積層膜構造の変化を観測することはできなかった。デバイスの密封方法を改善するには、セッティング方法に改善の余地がある事がわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の目標は装置の組み上げを行い、実際に測定することで課題を抽出することであったため、おおむね研究計画通りには進んでいると考えている。装置上の課題の解決策の指針はすでにたっている。
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Strategy for Future Research Activity |
課題はセルの密封方法、デバイスのセルへのセッティング方法であり、それを改善するには測定セルを作成しなおす必要がある。今回、J-PARCで作成した測定セルを使用したが、そのセルではサイズが小さく、デバイスをセッティングするジグを置くことが難しかった。次は新しくセルを設計しなおし、デバイスのセッティングと密封性に問題がないものを開発する。 また、デバイス中の内部の積層構造がデバイス駆動によって変化するかを、駆動前後に膜厚方向のTOF-SIMS測定分析をすることで事前に情報を集めてから中性子反射率法によるその場測定を行う。
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