2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K15441
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
大久 哲 山形大学, 有機材料システム研究推進本部, 客員准教授 (90646407)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機積層膜の熱安定性 / ガラス転移温度 / 二次イオン質量分析 / 中性子反射率法 |
Outline of Annual Research Achievements |
駆動中の有機EL素子内部での層間の材料混合を評価するため、実験室で行える予備の評価解析として二次イオン質量分析法による有機有機積層膜の深さ方向分析を行った。非破壊の中性子反射率法で得られた結果を補完する事ができる。今回は有機積層膜を加熱した際の層間混合を擬似的に駆動中の層間混合に見立てた検証をした。有機膜を深さ方向に掘り進める際に用いるスパッタリングイオンビームによるダメージを最小限に抑えるためアルゴンガスクラスターイオンビーム(GCIB)を用いて検討を行った。始めにGCIB、1次イオンビームの電流値、ラスターサイズ、中和条件の設定などの条件を振り、有機積層膜の界面がシャープに観測される条件を見出した。積層膜としては、Siウエハ基板上にTCTA/TPBiの二層膜を成膜し評価した。TCTAのガラス転移温度(Tg)は154度、TPBiのTgは124度である。二層膜を130度で加熱する前後の深さ方向プロファイルはほぼ変わらず混合は見られなかった。155度で加熱すると層間の混合が見られた。130度はTPBiのTgを超えているため、TPBi中にTCTAが溶け出す事を期待したが確認できなかった。別の分子の組み合わせではあるが、以前に中性子反射率法で加熱拡散を観測した際には、二層のうちの1層のTgを少しでも超えると層間の拡散現象が見られた事とは、異なる結果が得られた。その実験ではTgの差が100度あっても低い方の分子のTgを超える加熱温度で拡散が確認された。有機物の組み合わせにより界面の安定性が異なる事を示唆している。蒸着成膜のTCTAは基板に水平配向し、130度ではπーπ相互作用エンタルピーがTPBi中への溶解拡散エントロピーよりも大きいと考えられる。今まで有機膜の熱安定性はTgのみで議論されてきたが、積層膜に関しては他の熱力学パラメータを考慮に入れて考える必要がある事を見した。
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