2019 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication of metal nano helices towards the ultimate control of chirality of photons
Project/Area Number |
19K15454
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
Le ThuHacHuong 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 特別研究員 (60752144)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | キラル光メタマテリアル / 螺旋状ナノ構造体 / 光のキラリティの制御 / キラル分子検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,新たな光学技術の開拓が期待されているキラル光メタマテリアに着目し,可視又は近中赤外光域帯で動作できるキラルなメタマテリアルを実現するため,寸法と配列・配向等が精密かつ自在に制御できる螺旋状構造体の作製法を開発する.そして,螺旋状メタマテリアルによる光のキラリティの極限制御に挑む. メタマテリアルとは光の波長よりも微細なサブ波長スケールの人工構造体であり,光照射で構造体に誘起されるプラズモン共鳴によって,光学特性が制御できる材料である.近年,空間的対称性が破れたネジや螺旋状構造を導入することによって,巨大なキラルなプラズモン増強場が得られることが分かった.また,このようなキラル場を利用してキラル分子の検出を向上化することも期待される.しかし,微細螺旋状構造体を作製する有効な方法は未だ登場していない.その最も大きな課題は,動作波長を決める螺旋構造の寸法制御,とキラリティの光学特性を決める構造の配列・配向の制御である.この課題を克服するためには,提案したアイデアは (1) 薄膜の残留応力を利用して平面のリボン状構造を立体構造に形成させると(2)事前に微細な溝パターンを金属リボンに導入することで,リボンの曲がり方を誘導するの2点である. 本手法は自己形成的なプロセスでありながらも,メタマテリアルの動作波長と光特性を決める螺旋構造の寸法と配列,配向方向が精密に制御できる.従来のトップダウン型ナノ加工技術のみで螺旋構造が得られ,また大面積に亘り高速かつ低コストでの加工が可能となる全く新しい立体構造加工法である.本手法を通して,可視から近中赤外光帯域に動作するキラルメタマテリアルによる光のキラルリティの制御を初めて実験的に実証し,キラル分子検出へ展開する.そして,イメージング技術やセキュリティ,光通信などの光情報プロセシングへの応用も貢献したい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の目的に沿って,まず,残留応力を活用した螺旋構造の自己形成法を確立する.次に,得られた構造の光学特性及び構造とキラル分子との相互作用を実験的かつ数値計算で解明する.サイエンティフィックには,光特性制御という観点からどれだけ寸法の制御,均一な構造が制御できるかの極限を追求する.テクニカルな側面として,高速かつ大面積に作るように,加工工程を改良し実用化に挑む. 一年目では残留応力を利用した螺旋状構造体加工法を開発した.シリコン基板にUVリソグラフィ法によって斜めのリボンパターンを作製し,アルミニウム(Al)薄膜(膜厚:100 nm)を成膜することにより,Alリボンを得た.次にAlリボン上に電子線描画法を用いて100 nm程度の細かいラインとスペースパターン(LSパターン)を描画した.現像した後,Alのウエットエッチング法によってLS パターンを薄く削り取り,溝パターンを形成した.この状態で,基板全体を反応性イオンエッチング法で等方的なエッチングを行うと,Alリボンの直下の基板もエッチングされて,Alリボンが基板から跳ねて行く.最初の設計ではAlリボンの横にリボンよりわずかに大きい四角形構造(アンカー)を配置しておくことによって,Alリボンがアンカーのみで基板と接続される状態を作り出した.この状態の試料を大気中に取り出すと,Al薄膜に残る残留応力の違いによって,Alリボンはある特定な角度で湾曲しながら基板から浮かび離れる.その結果,直径の2.3-5.8umの螺旋構造が得られた.更に,最初のリボンの向き及びLSパターンとアンカーの相対位置の設計によって,右回りと左回りの螺旋,又は基板に対して垂直か平行の螺旋,様々な形成パータンも確認された. このように,新たな加工法を確立し,最小直径の2.3umの金属螺旋の作製及び配向・配列制御に成功しており,当初計画以上に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
二年目では,螺旋構造形成過程を解明するために,有限要素法(FEM法)を用い材料のナノメカニカル特性をモデル化して,本加工プロセスの骨格である残留応力をシミュレーションする.螺旋状の形成に影響する根本的な原因を明らかにした上で,作製条件とパラメータを最適化する.これにより,螺旋の直径,ピッチ等の構造パラメータの極限を追求する.そして,所望の光学特性に対して,数値計算による構造の寸法等のパラメータを予め決定する上で作製を行う.一方,アルミニウムに限らず,他の金属材料(Au, Ni)や半導体材料(GaN, SiC)の使用も検討する. 光のキラリティ制御を実証するには,得られた構造の光学特性を測定して解析する.その時,既存の方法(振動円偏光二色性分光光度計-VCD分光計)で構造の振動円偏光二色性を測定する.本実験は愛媛大学大学院理工学研究科(理学部化学科)の佐藤久子教授と共同で行う予定である.それと同時に,従来のVCD分光計では適応困難であった構造の旋光性や構造とキラル分子との相互作用評価については,測定光学系を自ら構築して測定を行う.ここでは,顕微鏡に集光せず,応答波長に対応する波長スイープ型のレーザを用い,平行ビームと偏向板等の光学部品を用い測定系を組み立てる.特にキラル光学特性評価には,優れた純度の偏光のビームが求められるが,ここまでのレーザ分光専門知識と経験を発揮し,早い段階でシステムを確立する.得られた結果とFEM法で計算した光特性と比較してその妥当性を議論する.今年度の後半では,応用としてキラル分子との相互作用を実験かつ数値計算的に解明する.特に螺旋構造による巨大なプラズモンキラリティとキラル分子の検出感度向上を定量的に評価する.また,FEM法によるプラズモンモードと感度向上のメカニズムを解明し,キラル分子検出や分離法への展開を議論する.
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Causes of Carryover |
本年度では,物品費として両面研磨シリコン基板や金属成膜用の材料(スパッタリングターゲット),微細加工用の試薬(レジスト,現像液,試薬等)の消耗品に使用する予定である.その他に,共同研究先で実験を行うための旅費及び国際学会発表(1回)と国内学会発表(1回)の旅費の使用を予定している.
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