2020 Fiscal Year Research-status Report
新規Ga2O3半導体の価電子帯エネルギー位置制御とP型導電性の創出
Project/Area Number |
19K15456
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
赤岩 和明 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (90778010)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 酸化物半導体 / 酸化ガリウム / P型ドーピング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は新規ワイドギャップ半導体として注目される酸化ガリウムを同じIII-VI族半導体に属する硫化ガリウムとの混晶化した酸化硫化ガリウム混晶半導体とする事で、酸化ガリウムの価電子帯エネルギー位置を浅いエネルギー位置へと制御し、浅いアクセプタ準位の形成を経てP型導電制御を実現する事を目的とする。酸化硫化ガリウムの結晶成長技術の確立を目指し、結晶成長方法として酸化物および硫化物の結晶成長が可能なミストCVD法を用い酸化硫化ガリウムの単結晶成長に取り組み、特に酸化硫化ガリウムの結晶成長において酸素、硫黄、ガリウムの各元素の供給量および供給比率の最適化が単結晶薄膜の成長において最重要課題になると思われるため、酸素源および硫黄源に水溶媒およびチオ尿素を選び、これらの供給量と比率に対する酸化硫化ガリウムの混晶比と結晶性への影響について調べた。 一昨年度は酸素源に水溶媒、硫黄源にチオ尿素を選び、両者の供給比率を適切に選ぶ事で酸化硫化ガリウムの硫黄混晶比を最大で10%程度まで制御する結果が得られた。一方で得られた酸化硫化ガリウムの薄膜は全て非晶質であり単結晶化に課題がある事や、水溶媒が強い酸素供給源であり酸素対硫黄の供給比において酸素リッチな成長条件となる事から硫黄の取り込み効率が低い事などが問題として残った。 そこで昨年度は硫黄の取り込み効率を改善するため、より酸素供給の弱い溶媒であるメタノール溶媒を用いた酸化硫化ガリウム混晶の作製に取り組み、最大で70%まで硫黄混晶比を向上させる事に成功したが、酸化硫化ガリウムの単結晶化には成功しなかった。 そのため、次年度は水溶媒とメタノール溶媒の混合化による酸素硫黄供給比の最適化や結晶成長温度の低減による成長条件の非平衡条件化などの取り組みにより酸化硫化ガリウム混晶の単結晶化を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は(1)酸化硫化ガリウム混晶薄膜の作製技術の確立、(2)酸化硫化ガリウム混晶へのP型ドーピング、(3)酸化硫化ガリウムを用いたPN接合の実現、の全体で3つのステージを計画している。 昨年度までの研究は(1)の研究ステージで留まっており、特に酸化硫化ガリウム混晶薄膜の単結晶成長技術の確立に課題を抱えている状態にある。本研究計画は(1)の酸化硫化ガリウムの作製技術確立に最も重きを置いており、本パートの実現に2年前後の時間で達成する予定であったため、現状は当初の研究計画の遂行に対してやや遅れている状態である。 次年度は昨年度達成できなかった酸化硫化ガリウムの単結晶成長の問題に引き続き取り組み、残りの研究計画の内、酸化硫化ガリウムのP型ドーピングまでの課題解決できるよう研究を遂行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究ではミストCVD法による酸化硫化ガリウム混晶薄膜の作製に取り組み、使用する溶媒の選択や原料供給比の調整により、最大で70%までの硫黄混晶比を得ることができた。一方で得られた薄膜は非晶質であるため、酸化硫化ガリウム薄膜の単結晶化が課題である事が分かった。次年度はこの課題の解決のため、溶媒の混合化による酸素硫黄供給比の最適化や成長温度の低温化による成長条件の非平衡化により、酸化硫化ガリウムの単結晶化を達成する
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Causes of Carryover |
薬品の購入単価が変更されたため、当初の予定額より予算の余りが生じた。 生じた予算の余りは次年度の薬品の購入費用に充てる。
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