2021 Fiscal Year Annual Research Report
プラスチック基板上における金触媒を用いたn型ゲルマニウム結晶の低温形成技術の開発
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19K15458
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
笠原 健司 福岡大学, 理学部, 助教 (00706864)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲルマニウム / 低温結晶成長 / 金誘起層交換成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,プラスチック基板上にその軟化温度以下で大粒径のゲルマニウム(Ge)結晶を形成し,それを用いた薄膜トランジスタ(TFT)の動作実証を試みるものである.申請者が開発した多層金誘起層交換成長法(ML-GIC)を発展させ,アモルファス(a-)Ge/Au多層構造ではなく,Au元素をGe元素と同時に蒸着しa-Ge層中にAuをドーピングしたGeAu層を用いた.これによりAu原子によるGe-Ge結合の弱化が促進されるだけでなく,プロセスの大幅な簡素化が期待できる.石英基板上にGeAu/GeOx/Au構造を形成し,300 ℃, 100 hで熱処理したところ,GeAu層のGeとAu層が入れ替わり,Ge層が石英基板上に形成された.このGe層はX線回折法や電子線後方散乱分光法などにより(111)方向に配向した多結晶のGeであることが確認され,Au層とa-Ge層の多層構造の代わりにAuをドーピングしたa-Ge層でもプラスチックの軟化温度以下で結晶化したGeを得られることが明らかとなった.これにより作製プロセスの大幅な簡素化ができる.しかしながら,形成されたGe結晶粒の大きさは,120 um程度であり,Au/a-Ge層構造を用いた場合と比べてGe結晶粒の粒径は小さくなることが判明した.これはAuをa-Ge層内にドーピングしたことにより,下地のAu層へのGeの供給が過剰となり,多量のGe結晶核が発生したためであると考えられる.これを抑制するためには,Geの拡散パスを制御するGeOx層の膜厚を調整し,Geの核発生を抑制しつつ,結晶成長速度が低くなりすぎないGeOx膜厚を今後,探索していく必要がある.このGe結晶薄膜をホールバーに加工し,電気伝導特性を調査したところ,Ge結晶粒の小粒径化に伴う正孔密度の増大や移動度の低下が見られたが,Au/a-Ge層構造を用いた場合と概ね同程度の特性が得られた.
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