2019 Fiscal Year Research-status Report
時間分解高次高調波分光法の高度化:超高速光化学反応の完全解明に向けて
Project/Area Number |
19K15460
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
金島 圭佑 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 助教 (30804025)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高強度場物理 / アト秒光科学 / 超高速分光 / 光異性化 / 高次高調波 |
Outline of Annual Research Achievements |
高強度超短パルスレーザー技術の発展によって可能となった「時間分解高次高調波分光法」は,高い時間分解能と空間分解能を併せ持つ強力な分光手法である.本研究の目的は,時間分解高次高調波分光法の更なる高度化を図り,超高速光化学反応を解明するための汎用な手法として成熟させることである. 当初の計画では,高調波信号のロックイン検出システムを開発する予定であったが,実験環境の変化に伴い,計画を多少変更した.変更後の計画では,近年研究が盛んとなってきている円偏光高次高調波を時間分解分光へと応用することを目標として,円偏光高次高調波の基礎的な物理特性の解明を目指した. 2019年度に行った研究では,円偏光高次高調波の位相特性が高次高調波発生の3段階モデルで記述できることを示した.具体的には,2種類の異なる希ガスからなる混合気体を用いて高次高調波を発生させ,異なる媒質から発生した高調波間の干渉を観測することで,円偏光高次高調波の位相特性を実験的に測定した.また,高次高調波発生の3段階モデルを用いたシミュレーションを行い,実験で得られたデータがシミュレーションでよく再現できることを確かめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように,当初の計画とは異なるが,円偏光高次高調波の位相特性の解明に成功している.この成果は,今後,高次高調波分光の対象をキラル分子などへ拡げていくために重要な成果であり,時間分解高次高調波分光の高度化という目標に沿うものでもある.この理由から、おおむね順調に研究が進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
円偏光高調波の干渉現象が次のパラメータにどのように依存するかを詳細に調べる:①高調波発生に用いる基本波と第2次高調波の強度比,②高調波発生に用いる2種の希ガス媒質のイオン化ポテンシャルの違い.これらのパラメータ依存性に関する実験データを詳細に取得し,理論モデルと比較したうえで論文にまとめる.
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Causes of Carryover |
研究計画を部分的に変更し,円偏光高次高調波の特性を調べることにしたため,高調波のロックイン検出装置の開発に使用する予定であった予算が未使用となっている.未使用の予算は,主として,モデル解析のための計算環境の構築に使用予定である.
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