2019 Fiscal Year Research-status Report
深部地下水中で形成されるフミンコロイド影響の定量的評価への挑戦
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19K15479
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
紀室 辰伍 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 核燃料サイクル工学研究所 環境技術開発センター, 研究職 (10752628)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地層処分 / 溶液化学 / 希土類元素の移行挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、深部地下水中に溶存した天然有機物であるフミン物質が、高レベル放射性廃棄物の地層処分における安全評価上重要な核種を模擬した希土類元素の振る舞いに、どのような影響を与えるかを定量的に評価することを目的としている。4年計画の1年目である平成31年度は以下の項目を実施した。 (1)深部地下水の採取:地層処分が計画されている深度300m以深の地下環境は、酸素濃度が極めて低い還元雰囲気であることが想定される。よって本研究の試験に用いる深部地下水は還元雰囲気を維持したまま採取し、希土類元素を添加する必要がある。そこで、日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センターの地下350m調査坑道の水平方向に掘削したボーリング孔から、還元雰囲気を維持した状態で地下水を30L採取した。また、低酸素濃度(0.1 ppm程度)の雰囲気制御グローブボックス内で採取した地下水を分取し、希土類元素としてCe、Nd、Eu、Hoをそれぞれ濃度10ppbとなるように添加した。 (2)多段ろ過システムの構築:本研究では幌延深部地下水から分離・精製したフミン物質を同地下水に添加し、希土類元素の移行挙動を評価することを計画している。精製したフミン物質の量は限られているため、容量1Lのステンレス製圧力容器を製作し、還元雰囲気を維持したまま段階的に限外ろ過を行うことが出来る実験システムを構築した。 (3)ブランク試験の実施:上記で採取し希土類元素を添加した地下水を0.2µmフィルタ、10kDa、3kDa限外ろ過フィルタで逐次ろ過を行い、各段階におけるろ液の希土類元素濃度をICP-MSを用いて測定した。その結果、0.2µmのフィルタを通過した希土類元素も10kDaのフィルタにほぼ100%捕集された。これは、地下水中のコロイド粒子が希土類元素の移行挙動に大きな影響を与えることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画通りに研究が進み、深部地下水の採取と実験システムの構築が完了し、基礎的なデータの取得もできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
幌延深部地下水から分離・精製したフミン物質を添加して逐次ろ過を行い、希土類元素の移行挙動に及ぼす影響を評価する。また、比較として国際腐植物質学会の頒布するフミン物質を添加して同様の試験を行い、フミン物質の代表性を議論する。フィルタに捕集された粒子の定量と解析コードを用いた移行挙動の評価を試みる。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも幌延深地層研究センターにおける地下水の採取が早く終わったため、旅費を節約できたのに加え、既存のウルトラホルダーが利用可能であり、新規に購入する必要がなくなったため。採取した地下水を用いた試験も順調に進んでいるため、当該年度未使用分と翌年度分の予算を用いて、核種移行挙動の解析を行うワークステーションと解析ソフトの購入を計画している。
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