2022 Fiscal Year Annual Research Report
深部地下水中で形成されるフミンコロイド影響の定量的評価への挑戦
Project/Area Number |
19K15479
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
紀室 辰伍 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 核燃料サイクル工学研究所 環境技術開発センター, 研究職 (10752628)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 地層処分 / フミン物質 / 溶液化学 / 希土類元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、深部地下水中に溶存した天然有機物であるフミン物質が、高レベル放射性廃棄物の地層処分における安全評価上重要な核種を模擬した希土類元素の移行挙動に、どのような影響を与えるかを定量的に評価することを目的として実施した。最終年度である令和4年度は、研究成果の取りまとめに向けて以下の項目を実施した。 (1)地下水成分を模擬した逐次ろ過試験 過年度までに実施した試験から、希土類元素の移行挙動に顕著な影響を及ぼしうると考えられた地下水成分として、炭酸イオン、リン酸イオン、天然有機物が挙げられた。よって、幌延深部地下水のイオン強度を模擬したNaCl溶液に、炭酸イオン、リン酸イオン、地下水抽出フミン酸を組み合わせを変えながら添加した試験、および脱炭酸処理をした地下水を用いた逐次ろ過試験を行い、実地下水中で希土類元素の移行挙動を支配する成分について考察した。その結果、熱力学計算上安定なリン酸塩の寄与よりも、炭酸とフミン酸が共存することによる効果が大きい事が明らかになった。この理由として、熱力学計算では考慮されていない、炭酸とフミン酸が関与した錯体やコロイド粒子が生成している可能性が考えられる。 (2)有機物影響の定量評価 逐次ろ過試験におけるフィルター重量の変化と、ろ液中の希土類元素の濃度の変化から、希土類元素の移行挙動に及ぼす有機物影響を定量的に評価することを試みた。その結果、地下水にフミン酸を添加した系において、3kDaのフィルタを通過する溶存錯体の画分が有意に増加し、希土類元素の移行が促進される可能性が示された。これは、幌延深部地下水フミン酸のサイズが表層のそれと比較して小さいことに起因すると考えられ、核種移行挙動の正確な評価のためには、地下水中の有機物の特性の評価が必要になる事が示唆された。
|