2019 Fiscal Year Research-status Report
バライト共沈と固化体形成を組み合わせた陰イオン形核種の安定化処理法の開発
Project/Area Number |
19K15481
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
徳永 紘平 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 人形峠環境技術センター, 研究職 (50814729)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バライト / ヨウ素 / 共沈 / 吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、水溶液中から元素を取り除いた後に、鉱物の構造内で長期間安定に保持する技術の開発を行う。福島の汚染水処理においてヨウ素(IO3-)やテクネチウム(TcO4-)といった電荷の小さな陰イオンによる汚染が問題となっているが、これらの陰イオンは水溶液中に多く存在する塩化物イオンや硝酸イオンとの競合により除去効率が著しく低下するため、従来用いられてきたハイドロタルサイトに代表される層状複水酸化物(LDH)による汚染水処理は難しく、有効な安定化処理法は未だ開発されていない。そこで申請者がこれまで研究してきたバライト(BaSO4)への共沈における元素の取り込みメカニズムの最適化を行ったところ、バライトへのIO3-の分配において硝酸イオンや塩化物イオンと競合せず、高い除去効率が示された。一方で、これらバライトに取り込まれたIO3-は固相内で不安定に存在しており、先行研究のLDHと同様に時間の経過とともに固相からのIO3-の高い溶出が新たに問題となる。しかし今年度の研究より、IO3-を取り込ませたバライトを希薄なリン酸の溶液に入れることで、純水のみでの溶出に比べて、IO3-を含む陰イオンの溶出量が著しく減少する結果が得られた。これはリン酸イオンが結晶表面に結合しバライトを安定化させたことを示唆しており、他の鉱物では抽出剤として働くリン酸イオンが、バライトに対してはイオンの再溶出量を低減化させる可能性を示している。これらの効果は他の陰イオンの抽出剤のうち、炭酸イオンで処理したバライトにおいても同様に確認されており、結晶表面でのバリウムイオンと抽出イオンの錯体形成のしやすさが影響していると予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究成果として、これまで主に抽出剤として用いられていたリン酸や炭酸などの陰イオンが陰イオンを取り込ませたバライトにおいては元素の溶出を防ぐ逆の効果を示すことが新たに明らかになった。この手法により、純水中では15%、海水中では77%と固相からの高いヨウ素の溶出量を示していた結果を、それぞれ1%以下に抑えることが可能となった。この化学反応は申請者が世界で初めて明らかにした現象であり、非常に高い独自性と創造性を持つと考えられる。このように本研究は当初の計画通りに進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として、どのような反応でこれらリン酸/炭酸の陰イオンがバライト構造内の陰イオンを安定化させ、固相からの溶出量を大幅に減少させているのかを明らかにする。これらの反応は、①結晶表面で二次的な結晶相が形成される、もしくは②結晶表面のバリウムイオンと錯体を形成させることで、鉱物に取り込まれた元素の溶出量を抑制したのではないかと考えられる。今後はよりメカニズム的な観点からこれらの反応を明らかにすることを目的とする。これらに加えて、リン酸塩ジオポリマーなどを組み合わせた固化体形成に関する試験も行い、陰イオン形核種の安定な処理・処分法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
令和元年度において購入を予定していた実験に係る設備や消耗品を別財源にて購入することができたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、令和2年度分研究費と合わせて、令和2年度に実施する実験に係る物品の購入に使用する。
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Research Products
(2 results)