2019 Fiscal Year Research-status Report
Accurate prediction of low-energy deuteron-induced reactions for development of small neutron source
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19K15483
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
中山 梓介 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (30758610)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 重陽子 / ベリリウム / 核反応断面積 / 中性子源 / PHITS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で対象とする低入射エネルギー(2MeV以下)でのBe-9+d反応を精度良く予測するためには、はぎ取り反応と呼ばれる反応過程の考慮が不可欠である。本研究では、はぎ取り反応の計算には歪曲波ボルン近似(DWBA)を採用することとした。DWBAによるはぎ取り反応の計算値は分光学的因子(S因子)による規格化の必要がある。 このため、本年度は、複合核反応の寄与がほとんど無くなりすべてがはぎ取り反応成分とみなせる入射エネルギー10MeV以上でのBe-9(d,n)B-10反応の角度微分断面積について、実測値とDWBA計算値を比較してS因子を求めた。これまでにも残留核B-10の励起エネルギー5.16MeVまでの各準位に対応するS因子は求めていたが、これを6.56MeVの準位にまで拡張した。これにより、本研究で対象とする入射エネルギー2MeVまでの範囲で起こり得るすべてのBe-9(d,n)B-10のはぎ取り反応について、S因子を求めることができた。 また、上記の成果を反映させたBe-9+d反応の核反応データを作成した。さらに、PHITSやMCNP6といったモンテカルロ法に基づく粒子輸送計算コードでの利用に供するため、上記の核反応データに基づいたFrag Data形式(PHITS用)およびACE形式(MCNP6用)のデータも、それぞれ作成した。これにより、Be-9+d反応を用いた中性子源のシミュレーションを実施することが可能となった。なお、これらのデータは重陽子核反応データベースJENDL/DEU-2020の一部として2020年度に公開予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の方針を変更して、これまでに高入射エネルギー領域で用いてきた理論手法(すなわち、はぎ取り反応の計算にDWBAを、複合核反応の計算に統計模型を、それぞれ用いる手法)が、低入射エネルギーのBe-9+d反応を用いた中性子源のシミュレーションにどの程度適用できるかを初めに検証することとし、本年度はその準備に充てることとした。 その結果、粒子輸送計算コード用のBe-9+d反応のデータを作成でき、本反応を用いた中性子源のシミュレーションを実施できる環境を構築することができた。本研究で必要な範囲の全てのS因子も求められたため、「今後の研究の推進方策」の項に記載の通り、後は必要に応じて共鳴反応成分を見積れば小型中性子源の概念設計や性能評価が行える段階に入ることができた。 以上から、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
開発したBe-9+d反応用のFrag DataをPHITSで読み込んで、重陽子入射エネルギー1~2MeVの範囲における厚いベリリウム標的に対するシミュレーションを行う。発生中性子の量・角度分布・エネルギー分布について、シミュレーション結果を実測値と比較する。 十分な精度で実測値が再現できている場合には、本シミュレーションに基づくBe-9+d反応を用いた小型中性子源の概念設計・性能評価に移行する。そうでない場合には、現状では複合核成分の計算に統計模型を用いているために共鳴反応が考慮されていないことが主要因と考えられる。このため、共鳴理論によって共鳴反応成分を見積もり、2MeV以下のBe-9+d反応の予測精度の向上を試みる。
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Causes of Carryover |
研究計画申請後の人事異動により、所属研究グループで所有している計算機を本研究に使用することができるようになった。このため、当初予定していた計算機の購入の必要が無くなり、次年度使用額が生じた。生じた額は次年度以降、出張旅費や書籍購入費の支払いに使用する。
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Research Products
(1 results)