2019 Fiscal Year Research-status Report
広域需給モデルによる太陽光・風力発電の自立的普及に適した電力システム改革策の研究
Project/Area Number |
19K15491
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
分山 達也 九州大学, エネルギー研究教育機構, 准教授 (70637777)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 再生可能エネルギー / 太陽光発電 / 風力発電 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、変動型自然エネルギー(太陽光発電・風力発電)の自立に向けた経済的課題(卸売電力市場での電力取引を通して事業採算性確保)に対して、電力システム(インフラ・政策・市場 ルール)の転換による解決策を探求することを目的として、広域需給モデルを用いた電力市場価格のシミュレーションを行い、これをもとに太陽光発電と風力発電の事業採算性への影響を評価する。2019年度はまず、日本の広域需給モデルを構成するインプットデータベースを構築した。 構築した日本の広域需給モデルを用いた日本の電力市場価格のシミュレーションでは、2018年の電力市場価格(前日市場)を良く再現できた結果となった。2018年の冬や夏の一部の時間では、電力需給のひっ迫時に実際の市場価格が100円/kWh近くに高騰していることがあったが、このような価格の高騰はシミュレーションでは再現できていない。これは、シミュレーションが発電所の限界費用をもとに価格を計算していることに対して、実際の市場では買値がたかどまりし、売値以上の値段が付きうることによって発生している。 本研究のシミュレーション結果は、買値の高騰による一時的な市場価格の高騰を考慮しないものの、研究目的とする電力システム改革策の影響分析という観点では、十分活用可能である。 さらに、所属組織において計画されていた国際シンポジウムにおいて、ドイツから再生可能エネルギーの系統・市場統合に関する専門家を招聘し、本研究で分析すべき政策シナリオについて情報収集と意見交換を行った。 今後、本モデルを活用した分析を行い、その成果を発表する計画である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、日本の広域需給モデルを構成するインプットデータベースを構築し、広域需給シミュレーションソフトウェアの一つであるABB PROMOD上で、日本の広域需給モデルを構築した。そして、モデルを用いた電力市場価格のシミュレーションを行い、モデルの妥当性を確認した。 具体的には、過去の研究で2016年を基準年として構築したデータベースを発展させ、2018年を基準年として、各一般送配電事業者ごとの8760時間の電力需要、再生可能エネルギーの導入容量と毎時の出力状況、従来型発電設備の容量や運転制約、コスト、燃料費、揚水発電設備、地域間連系線などのデータベースを構築した。さらに、各発電所の停止情報や、起動停止に関する時間的制約、各一般送配電事業者のエリアにおける安定供給に関する制約条件などを、公開情報に基づいて計算条件として設定した。 そして、広域需給シミュレーションソフトウェア上に、日本の9つの一般送配電事業者のエリアと各エリアをつなぐ連系線を模擬したモデルを構築した。これを用いて、各エリアの需給バランス、連系線潮流、出力抑制量、電力市場価格をシミュレーションし、2018年の実績と比較して、シミュレーション結果が十分な精度を有していることを確認することができた。この結果から、2020年度は計画していた各種施策の定量的な分析や研究に進むことができる。よって本研究は、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
広域需給モデルを用いて電力システム転換策を定量的に評価するため、2020年度はまず、再生可能エネルギーの大幅な導入拡大が電力需給や出力抑制、電力市場価格へ与える影響を定量的に評価する。そのために昨年度に2030年を基準とした将来シナリオを設計しており、本年度はこのシナリオの評価を行う計画である。 再生可能エネルギーの導入拡大の影響を定量的に分析したうえで、次に、電力システム改革策の施策の影響の分析を行う。分析の対象となる施策は、市場面(出力抑制やフィードインプレミアム)やインフラ面(地域間連系線、国際連系線,蓄電)の影響の定量的な分析を計画している。これらの結果から、太陽光発電・風力発電の自立した普及を促す電力システム転換策を明らかにする。 本研究では、国内外での学会発表を計画していたが、新型コロナウイルスの影響で2020年度の学会等の開催は現時点で不透明である。そこで学術誌への投稿によって研究成果の公表機会を確保していきたいと計画している。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額は、2020年度の請求分と合わせて2020年度の需給シミュレーションソフトウェアのライセンス使用料に充てる計画である。2019年度から本ソフトウェアの利用を開始しているが、2019年度は所属組織の予算で賄うことができたため、2020年度のライセンス使用料を本研究予算から支出する計画である。ライセンスの見積額によると、次年度使用額と2020年度請求予定額の合計とライセンス料がほぼ同額となる見込みである。
|