2019 Fiscal Year Research-status Report
ヒドリドドープされた金クラスター:生成機構と反応性の理解の深化
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19K15499
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高野 慎二郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40783957)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 配位子保護金超原子 / 配位子保護金クラスター / 配位子保護合金クラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度はヒドリドドープしたホスフィン保護金超原子HMAu8 (M = Au, Pd, Pt)を利用した原子精度精密転換反応をさらに高度化するため、金属反応剤として、チオラートやアルキニルといったアニオン性配位子を含む金(I)錯体の利用を検討した。反応は円滑に進行し、正二十面体M@Au12超原子をコアに持つ一般式MAu24L18 (L = チオラート、アルキニル)で表されるクラスターへの高選択的反応を開発できた。この表面変換反応は高収率(>50%)で数百mgスケールまでスケールアップでき、金超原子を構成要素とした物質科学の発展を加速するものと期待できる。この結果はJ. Am. Chem. Soc誌に掲載され、Front Coverを飾った。 ヒドリドドープが可能となる幾何・電子構造の要因を明らかにするため、表面が完全にチオラート配位子で被覆された6電子系超原子Pt@Au12を原料として検討を行ったところ、期待していたヒドリドドープ体は確認できず閉殻8電子系Pt@Au12超原子が得られた。この結果は幾何構造が閉殻構造をとった場合ヒドリドドープ体が検出可能な安定性を持たないことを示唆している。一方この検討の中で、6電子系超原子が未知の開殻7電子系Pt@Au12超原子に高選択的に転換できることを発見した。反応の当量関係と、単離した8電子系超原子を利用した反応検討の結果、7電子系超原子は6電子系超原子と8電子系超原子の均一化反応によって生成していることを突き止めた。表面が絶縁層であるチオラートで保護されている金超原子間の電子移動反応が可能であることを明瞭に示した結果はこれまでになく、超原子の電子構造を変調させるための新たな方法論となりえる。この結果はJ. Am. Chem. Soc誌に掲載され、Supplementally Cover Imageに選ばれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績に記載したように、当初二年間での遂行を計画していた、(1)ヒドリドドープ金超原子の生成に必要な要件のあぶり出し、(2)ヒドリドドープ金超原子を利用した超原子転換反応の高度化は初年度でほぼ達成したと考えられるため、当初の計画以上に研究が進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒドリドドープ金超原子の転換反応はこれまで単量体間の転換が限界であった。今後の研究として、これまでに検討した金属反応剤の反応性を利用して原料超原子が多量化したような構造体の構築を検討することで、これまで偶然に頼っていた異方性金クラスターの標的合成を可能にする端緒を得ることを一つの目標とする。 これまでのヒドリドドープ合金超原子では構成要素がAu, Pd, Ptに限られていた。一方で、他の族の金属元素を含むヒドリドドープ金超原子の生成を試み、それを利用した転換反応を開拓することで、これまでに合成されていない合金超原子の標的合成が可能になると考えられる。今後の展開として、これら合成例のない合金超原子を標的合成するための方法論の確立し、ドーパントが金超原子の性質に与える影響をより詳細に検討する。具体的には光物性、特に励起状態のダイナミクスの基礎的理解を通して、機能性物質の構成要素としての超原子の可能性を模索する。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも、旅費に関わる支出および共同利用施設の利用料が少なかったため、次年度使用額が0とならなかった。この差額は、翌年度の物品費(主に消耗品)に利用する予定である。
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Research Products
(8 results)