2020 Fiscal Year Research-status Report
単一分子接合中における化学反応の統計的シミュレーション
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19K15505
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大戸 達彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90717761)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 密度汎関数法 / 非平衡グリーン関数法 / 第一原理計算 / 単一分子接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
単一分子接合の構造とトンネル伝導の機構を原子レベルで明らかにすることが本研究課題の一つの目標であるが、それに関連して二つの代表的な成果をあげることができた。 ・三脚型分子の架橋構造の推定と伝導特性(Small 17, 2006709 (2021).):通常の単一分子接合ではチオールアンカーなどを用いて電極と接合させるが、より安定な接合を維持するために、複数点で架橋するアンカーの開発は重要である。今回、アンカー部位と分子骨格の間でπ共役が維持された新たな三脚型分子を開発し、その架橋構造と伝導特性を明らかにした。特に架橋構造の解析には、測定で得られた電流―電圧曲線に対して教師なしクラスタリングを導入し、データ科学の観点からも新たな解析方法を提案することができた。 ・ホッピングサイトの数を制御した分子の伝導(J. Am. Chem. Soc. 143, 599 (2021).):意図的にねじれを導入することで、任意のチオフェン環数でπ共役を区切ったオリゴチオフェン単分子ワイヤーの電気伝導度の解析を行った。時間依存密度汎関数法を用いた計算から、導入されたねじれによってπ共役がよく切断されていること、チオフェン環6-8個がホッピングサイトの単位となりうることを明らかにした。 平行して、単一分子接合の破断過程を分子動力学シミュレーションを用いて解析するための力場の構築を行っている。チオールアンカーに結合する金の数によってS-C結合が不自然に伸長するといった問題点が発生したため、それらの事象を防ぐようにパラメータを改善した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
単一分子接合の架橋構造解析について、実績の概要で説明したような成果を出すことができた。また、分子動力学シミュレーションのための力場開発についても、現れた問題点を解決し、production runを実行可能なまでに進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
開発を進めている力場を用いて、単一分子接合の破断過程の分子動力学シミュレーションを行い、スナップショットに対して第一原理伝導計算を行うことで、理論計算から伝導度ヒストグラムを算出する。架橋構造の移り変わりの解析を行って実験データと比較することで、特定の架橋構造が表れる確率や接合を維持する時間の議論につなげる。
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Causes of Carryover |
当初の予定より少し安価に計算機を購入することができた。 次年度は、共用利用の大型計算機の利用料として使用する予定である。
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