2021 Fiscal Year Annual Research Report
単一分子接合中における化学反応の統計的シミュレーション
Project/Area Number |
19K15505
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大戸 達彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90717761)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 第一原理計算 / 単一分子接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の成果としては、金属錯体単一分子ワイヤーの電気伝導計算を行い、リガンドの周辺置換を行うことで、電気伝導に主に寄与する分子軌道をHOMOからLUMOに変更できることを示した(Chem. Sci., 2021,12, 10871-10877)。単一分子電気伝導においては、多くの有機分子は金電極のフェルミ準位にHOMOの方が近く、ホール伝導となり、n型有機半導体となる分子ではLUMOがフェルミ準位に近く、電子伝導となりやすい。伝導準位を操作するのは容易ではないが、HOMO-LUMOギャップが小さく、HOMO、LUMOのいずれもフェルミ準位に近い金属錯体分子であれば、周辺置換によって電子ドープをすることで、伝導準位の切り替えを行うことが可能であることが示された。
単一分子接合の構造とトンネル伝導の機構を原子レベルで明らかにすることが研究期間全体を通じた本研究課題の一つの目標であるが、それについては三脚型分子の架橋構造の推定と伝導特性(Small 17, 2006709 (2021).)の解明が代表的な成果となった。通常の単一分子接合ではチオールアンカーなどを用いて電極と接合させるが、より安定な接合を維持するために、複数点で架橋するアンカーの開発は重要である。今回、アンカー部位と分子骨格の間でπ共役が維持された新たな三脚型分子を開発し、その架橋構造と伝導特性を明らかにした。特に架橋構造の解析には、測定で得られた電流―電圧曲線に対して教師なしクラスタリングを導入し、データ科学の観点からも新たな解析方法を提案することができた。
|