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2020 Fiscal Year Research-status Report

ダブルピーク型5-fsパルス光発生による分子振動位相を揃えた選択励起手法の開発

Research Project

Project/Area Number 19K15512
Research InstitutionKanagawa University

Principal Investigator

橋本 征奈  神奈川大学, 付置研究所, 研究員 (30824932)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2022-03-31
Keywordsフェムト秒パルスレーザー光 / 極限的超短パルス光 / 分子振動励起
Outline of Annual Research Achievements

(1)ダブルピーク型パルス光の発生
本研究ではダブルピーク型パルス光を用いてコヒーレントに分子振動を励起している。本年度は励起効率を向上させるために、広帯域紫外パルス光の強度とスペクトル形状を安定化させ、さらに試料表面での光子密度を向上させた。まず、紫外パルス光の帯域拡張に用いているホローファイバーへの入射光路の安定化を行った。具体的には、ホローファイバーへの集光用凹面鏡の焦点距離を伸ばし、ピエゾアクチュエータ付き電動マウントを導入した。ビーム位置センサーと組み合わせ、光軸変化をフィードバック制御した結果、ホローファイバーへの入射光軸の安定性が高まり、広帯域紫外パルス光の短期(秒)および長期(数十時間)での強度とスペクトル形状の安定性が向上した。次に、励起光の試料表面で光子密度を向上させるために、ポンプ・プローブ測定系での光路分岐手法を変更した。透過型のビームスプリッターを導入することで、ポンプ光とプローブ光のビーム形状を円形に保ち、試料を空間的に均一かつ高密度に励起可能にした。さらに、ビームスプリッターの透過により生じたパルス光の時間分散を、チャープミラーの反射回数と可変形鏡の電圧値を調整することで補償した。
(2,3)分子振動の選択励起
昨年度は小分子かつ、純物質であるアセトニトリルとベンゼンの分子振動モードを選択的に励起した。本年度は9,9′-ビアントラセン溶液を試料とし、分子振動の選択的、かつ、コヒーレントな励起を試みた。スペクトル整形した2種類の紫外パルス光を用いて、電子励起状態における振動基底状態へ励起した場合と、振動第一励起状態に励起した場合とのポンプ・プローブ測定結果を比較した。その結果、照射した励起光のスペクトル形状によって異なる分子振動が励起されている事が示された(論文執筆中)。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

(1)ダブルピーク型パルス光の発生
本年度、広帯域紫外パルス光の強度とスペクトル形状の安定性を向上させ、スペクトル端を用いるダブルピーク型パルス光による分子振動のコヒーレント励起を可能にした。また、試料を空間的に均一かつ高密度に励起可能にし、非線形光学過程である分子振動のコヒーレント励起効率を向上させた。さらに、チャープミラーの反射回数を再検討し、可変形鏡を再調整することで広帯域紫外パルス光の時間分散を補償し、フーリエ限界に近い紫外パルス光を発生させた。
(2)分子振動の選択励起
9,9′-ビアントラセンを用いて、電子励起状態における分子振動の選択的、かつコヒーレントな励起を試みた。スペクトル整形した2種類の紫外パルス光を用いて、電子励起状態における振動基底状態へ励起した場合と、振動第一励起状態に励起した場合とのポンプ・プローブ測定結果を比較したところ、照射した励起光のスペクトル形状によって異なる分子振動が励起されている事が示された(論文執筆中)。
以上、2020年度の研究計画に対して十分な成果が得られおり、おおむね計画通りに進行していると評価した。オンライン学会での未発表データの取り扱いが難しく、予定していた学会発表は次年度に見送ることにした。

Strategy for Future Research Activity

(1)ダブルピーク型パルス光の発生
本年度、広帯域紫外パルス光の強度・スペクトル形状の安定性を向上させ、スペクトル端を用いるダブルピーク型パルス光による分子振動のコヒーレントな励起を可能にした。しかし、スペクトル整形の度に、実験者が入室する必要があり、その後、レーザー光源が再安定化するまでに時間をとる必要がある。この安定化時間を削減するために、スペクトル整形用の金属板を電動ステージ上に設置することで、パソコン制御により実験室外からの遠隔操作によるスペクトル整形を可能にし、実験精度を向上させる。さらに、CCD検出器を用いる新規測定系を構築しS/Nの向上を図る。
(2)分子振動の選択励起
来年度は、さらに分子構造の対称性が低い有機化合物に対してダブルピーク型パルス光を照射し、本手法の適応可能範囲を確認するとともに、適応範囲の拡張手法を検討する。
(3)振動モードの選択励起による化学反応制御
まず、9,9′-ビアントラセンの振動基底状態と振動第一励起状態を各々選択的に励起し、反応性を比較する。また現状では、ダブルピーク型パルス光を用いる分子振動の実時間分光測定装置は、励起光と検出光に同じスペクトル形状のパルス光を用いており、励起光スペクトルから排除した波長域の光は検出光からも排除されてしまう。そこで、来年度は別途、広帯域な検出光を導入し、励起光スペクトルの整形による検出波長域の減少を回避する。

Causes of Carryover

本年度は大学への入構規制があり(新型コロナウイルス感染症対策のため)、長時間の実験実施が困難であった。本来はCCD検出器を用いて新規測定系を構築しS/Nを向上させる計画であったが、既存の測定系を用いたままでも、光源の安定性を向上させればS/Nを向上させる余地があると考察した。新規測定系の構築には長い実験時間を要するため計画を変更し、実際に光源の安定化を試みた。その結果、S/Nが1桁向上したため、分光測定と測定結果の解析を行った。そのため、新規測定系の構築に使用する光学部品の購入費を使用しなかった。また、オンライン学会での未発表データの取り扱いが難しく、予定していた学会発表を次年度に見送ったため、学会参加費および旅費を使用しなかった。
次年度は、CCD検出器を用いる新規測定系を構築する予定であり、構築に必要な光学部品・計測機などの購入に物品費を使用する。

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Published: 2021-12-27  

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