2019 Fiscal Year Research-status Report
2次元2色波形制御パルスを用いた強レーザー場反応制御の機構解明と反応経路の開拓
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19K15515
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
遠藤 友随 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 研究員(定常) (60823929)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 強レーザー場 / トンネルイオン化 / 光電子分光 / 電子再衝突 |
Outline of Annual Research Achievements |
基本波パルスと二倍波パルスの強度、偏光が独立に制御可能な2次元2色波形制御パルスの発生装置を設計・構築した。基本波と二倍波の間の位相差の安定化のため、光学定盤を新たに導入したことに加え、フィードバック制御により位相差を制御するための光学系およびプログラムを新たに設計・構築した。KrおよびXe原子をターゲットとした光電子画像計測をおこない、位相制御の安定性を評価した。その結果、24時間以上の長時間に渡って位相が安定に保たれることが確認された。 OCS分子をターゲットとして、位相制御2色レーザー場中での解離性イオン化過程について光電子-光イオン同時計測をおこなった。その結果、同時に計測されたイオン種(OCS+もしくはS+)によって光電子の運動量分布が大きく異なることが見出された。レーザー電場波形に対する依存性も同時に計測されたイオン種によって異なっており、これはイオン化過程や電子再衝突過程など電子が放出されるまでの過程が異なっていることを反映したものであると考えられる。 レーザー電場中の電子トラジェクトリー計算に電子とイオンコアとのクーロン相互作用を考慮した計算をおこなった。イオン化により直接放出される電子、イオンコアとの衝突により弾性散乱された電子、イオンコアとの衝突により非弾性散乱された電子の各トラジェクトリーに対し、モデル計算をおこなった。その結果、実験結果と定性的に一致する結果が得られた。この結果は強レーザー場中の分子解離過程に関する情報が光電子から読み出せることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2次元2色波計制御パルスの発生装置の設計および構築をおこなった。 直線偏光パルスを用いて、十分な位相精度での制御が可能であることが実証された。 また、電子とイオンのクーロン相互作用を取り入れた古典計算により実験結果と定性的に一致する結果が得られることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
円偏光パルスを導入し、2次元2色波形制御パルスを用いた計測を進める。 より高精度な計測のため、フィードバック制御に加えて、ショットごとに位相のタグづけが可能な装置を新たに設計・構築する。 また、現有の計測装置では背景ガスからの寄与により、多価イオンからの真のコインシデンス信号を精度よく検出できないため、作動排気の多段化および液体窒素を用いて背景ガスを低減するための装置の設計に着手する。
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Causes of Carryover |
2次元2色波形制御パルスの発生装置の光学系を当初とは変更した結果、必要部品の購入額が抑えられた。次年度使用額については令和2年度分と合わせ、新たに設計・構築を進める位相タグ付装置の購入に使用する予定である。
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