2019 Fiscal Year Research-status Report
電気化学的な手法による電荷移動型集積体薄膜の創製と磁気機能制御
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19K15518
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
関根 良博 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (40733465)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金属錯体化学 / 電子ドナー・アクセプター / 磁性 / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
電荷移動錯体は、電子ドナー(D)及びアクセプター(A)間の電荷移動に伴い電子や磁気スピンが相乗的に機能するため、良好な電気伝導性や特異な磁気特性を示す。π-πスタッキング等の非共有結合により弱く集積したDA孤立分子系と比較して、DAユニットが共有結合により連結するDA集積体系は『磁気格子の構築』や『空孔の設計及び制御』が期待できる。本研究では電子状態と磁性が強く相関した電荷移動型集積体の薄膜方法を確立し、磁気機能の外場変換可能な物質群を創出することを目的としている。対象物質は①[Ru2] (水車型ルテニウム二核錯体)/TCNQ, ②テトラオキソレン架橋鉄層状集積体の2種類を検討しており、いずれも酸化還元活性な多孔性磁石である。結晶試料の合成及び物性測定と並行して、薄膜試料の構築法を検討した。 はじめに①について検討した。[Ru2]とTCNQ誘導体を含む有機溶媒にITO電極基板を浸漬し、定電位電解を行うことで基板上に緑褐色からなる電荷移動型集積体薄膜の構築に成功した。走査型電子顕微鏡を用いて薄膜の表面観察した結果、平滑で均一な表面構造をもち、X線回折測定から、薄膜試料の構造は結晶試料と同一であることが分かった。構築した薄膜試料の電気化学応答性について検討した結果、ポテンシャル変化に伴う薄膜の色調変化が観測され、薄膜の電子状態変化が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電荷とスピン状態が協奏的に制御可能な電荷移動型集積体からなる薄膜試料の構築に成功した。また、置換基の異なる[Ru2]もしくはTCNQ誘導体を用いることで、様々な薄膜試料を系統的に構築することに成功した。本物質系で見出した電気化学的析出法は、他の電荷移動型集積体の薄膜構築に適用への展開も検討していく。また、薄膜試料の外場応答性について検討した結果、薄膜試料の電子状態が可逆かつ高速に変換可能であり、本研究の目的である薄膜試料における磁気機能の劇的な変化が期待できる。以上より、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
磁気機能について明らかにするため、薄膜材料に対する分光化学的な同定を行う。外部刺激印加前後での薄膜試料について磁気円二色性分光法(MCD法)を用い、磁気転移に対するファラデー効果をプローブとする計画である。
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