2020 Fiscal Year Research-status Report
三回対称性立体π共役系を用いた炭素同素体構造の科学
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19K15520
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
珠玖 良昭 名古屋大学, 教養教育院, 講師 (90816216)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 炭素同素体構造 / トリプチセン誘導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、グラフェンや理論的に予測されたK4炭素といった、sp2炭素が作る炭素同素体の構造を、炭素原子の代わりに3回対称性を有する分子を用いて構築する方法論の確立と、それによって得られる構造から発現する物性の探索を目的としている。構成要素として構造制御や価数制御に利点を有する分子を用いることで、炭素材料では実現できない構造の形成や機能付与の可能性があることから意義のある研究である。 2年目の当該年度においては、分子性ハニカム構造の構築に向けてトリプチセン誘導体のラジカル塩の結晶化を行い、いくつかのラジカルイオン塩の結晶化に成功した。中でもドナー性部位を有するトリプチセン誘導体は、酸化状態を反映して分子の形が大きく変化することから、分子の3回対称性を必要とするハニカム構造は得られなかったが、様々な2次元構造を有するラジカルカチオン塩が得られている。この知見を基に、酸化還元に対しより剛直な骨格を有するトリプチセン誘導体の物質開拓も進めた。分子軌道計算や電気化学測定によりビルディングブロックである分子の電子授受能を評価した。また、これらの分子を用いることで分子性ハニカム構造を有する結晶の作製にも成功した。 以上の結果は、化学修飾やπ拡張に関わらず、トリプチセン骨格がもつ分子トポロジーはハニカム構造構築に有用であることを示すものである。また、本研究の最終目的である炭素同素体構造の特殊なバンド構造に由来する物性発現に向けて研究を進めるための重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分子性グラフェン構築に適したトリプチセン誘導体の選定に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
分子性ハニカム結晶において、基礎物性測定および価数制御による物性発現を進める。
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Causes of Carryover |
コロナの影響により学会参加費および旅費の支出がなくなったため。次年度使用額については、延期となった学会の参加費および旅費として支出する。
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Research Products
(3 results)