2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K15522
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
藤村 卓也 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (80757063)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | S2発光 / Kasha則 / ポルフィリン / 層状化合物 / 粘土鉱物 / フタロシアニン |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は(1)S2発光を示す適切な色素の探索とナノシートに対する吸着挙動評価、(2) 粘土ナノシート上における色素のS2発光挙動の調査に注力した。 (1)S2発光を示し、ナノシートへの吸着しうる色素としてカチオン性ポルフィリン誘導体、シアニン誘導体、フタロシアニン誘導体について検討を行なった。これらの検討により、ポルフィリン誘導体が最も顕著なS2発光を示すことが明らかとなった。また使用したカチオン性色素はナノシート上に吸着可能であり、さらには吸着量によらず、吸収スペクトル、発光スペクトル解析を煩雑にする会合体を形成しないことが明らかとなった。これらの吸着特性より、本検討に最も適切な分子としてカチオン性ポルフィリンを使用することとした。
(2)(1)で選択したカチオン性ポルフィリンをナノシート上に吸着させ、その光化学的挙動を評価した。カチオン性ポルフィリンはナノシート吸着後もS2発光特性を維持していた。S1状態からの発光(S1蛍光)はナノシート上における色素の吸着密度が増加するにつれ、発光強度が減少する自己消光(濃度消光)が観測されたのに対し、S2発光強度は吸着密度に依存せず、一定であった。これはS2状態の自己消光の速度定数に対して、S2発光の速度定数が非常に大きいため、消光がほとんど観測されなかったと考えられる。S2発光の発光量子収率は、ナノシート吸着後に減少した。ナノシート吸着によりS2状態とS1状態のエネルギー差が減少していたことから、エネルギーギャップ則に従い、S2状態からS1状態への内部転換の速度定数が増大したことが原因であると考えている。一方、時間分解蛍光および定常蛍光スペクトル測定の結果より、S2発光は強い温度依存性を示すことが明らかとなった。これを利用し、今後はS2状態の失活過程における活性化エネルギーなどの詳細を調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は発色団の異なる色素のS2発光挙動およびナノシートに対する吸着挙動を調査した。S2発光の発光増強・長寿命化には至らなかったものの、S2発光の評価手法を確立し、今年度得られた知見からS2発光の発光増強・長寿命化に向けた分子設計指針を得た。また得られた成果についても成果に関連する学会・論文発表を行なっている。これらに加え他の発色団を持つ色素群についてもS2発光の調査・検討を並行して推進している。以上のことから、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は以下の実験を推進する予定である。 (1)S2発光強度の温度依存性を調査し、ナノシート吸着がS2-S1間の内部転換における活性化エネルギーに与える影響を明らかとする。 (2)ポルフィリンの中心金属、官能基(特にカチオン化部位)を再設計・合成し、これらのナノシートに対する吸着挙動、ナノシート上におけるS2発光挙動を調査する。 (3)色素/ナノシート複合体膜の作製し、ナノシート層間における色素のS2発光挙動を調査する。 (4)S2発光増強および長寿命化が観測された色素に対し、S2状態を経由した光反応の可能性を検証する。
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Research Products
(9 results)