2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K15522
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
藤村 卓也 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (80757063)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | S2発光 / Kasha則 / ポルフィリン / 層状化合物 / 粘土鉱物 / 高次励起状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではS2状態からの発光(以下S2発光)を示す水溶性ポルフィリン誘導体を探索し、これをプローブとして溶液中および無機ナノシート表面におけるS2発光挙動の変化を調査した。 2020年度で検討した内容は(1) S2発光を示すポルフィリン誘導体に導入するカチオン部位の最適化と中心金属種の影響の調査、(2) (1)で得られたポルフィリンのナノシート上におけるS2発光増強の検証、(3) S2発光特性を示す(ポルフィリン以外の)発色団を持つ色素の探索と粘土ナノシートへの複合化方法の検討を主に行なった。(1)、(3)では概ね順調な成果が得られ、(1)では適切なカチオン部位を見出し、当該ポルフィリン骨格を有するポルフィリンであれば、中心金属を変更してもS2発光を示すことを明らかとした。(3)では非水溶性色素を粘土ナノシートに複合化する手法を確立し、各種分光学測定が十分可能な透明性を有する色素-ナノシート複合体薄膜を得ることに成功した。また副次的なデータではあるが、最低励起状態(S1状態)の蛍光が著しく増強されることを見出した。(2)では(1)で最適化したカチオン性金属ポルフィリンをナノシート上への吸着させた場合、S2発光の増強が確認され、発光量子収率が向上することを明らかとした。一般にS2状態の失活の速さは、S2状態とS1状態とのエネルギー差(ΔE)の増加に伴い減少するが、本系ではナノシート吸着前後においてΔEの変化が見られなかった。これらの結果から、現在はナノシート吸着によるS2状態の無輻射遷移(失活)が抑制された結果、発光量子収率が向上したと考えている。 現在はS2状態のダイナミクスや失活過程における温度依存性等を調査し、失活抑制効果の具体的メカニズムや定量的評価について検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた通り、本年度は本研究の大きな目的であったS2発光増強を達成した。またこれに加えこの発光増強効果のメカニズム調査を進めるとともに、他の色素群についても複合化手法を確立に成功している。これらの成果より、概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は以下の活動・検討を行う予定である。 (1)学術誌・国際学会における本成果の発表を行う。(2)ナノシート吸着が金属カチオン性ポルフィリンのS2状態のダイナミクスに及ぼす影響の調査を行う。 (3) S2発光増強効果の具体的なメカニズム解明、および効果の定量的評価を行う。(4)ポルフィリン以外の発色団を有する分子におけるS2発光増強効果を調査し、当該効果の汎用性を明らかとする。
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Causes of Carryover |
本年度における研究活動はおおよそ順調に進展したが、コロナ禍の影響により学会での成果発表や学術誌への投稿などは十分に行えなかった。これに加え、東北大学における超速分光実験などの実施が困難であったため、これら活動で使用する予定であった費用を2021年度に使用することとした。2021年度はこれらの活動の実施に合わせ、今後の研究の推進方策で示した内容について検討を進めていく予定である。
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Research Products
(12 results)
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[Presentation] Photogeneration of Singlet Oxygen by Cationic Phthalocyanine Adsorbed on Clay Nanosheet without Aggregation2020
Author(s)
Okada, K , Arita, K , Nishiguchi, M , Fujimura, T , Ikeue, T , Sasai, R
Organizer
4th Asian Clay Conference (ACC-2020) Fully-Online Conference
Int'l Joint Research
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