2019 Fiscal Year Research-status Report
光アンテナ含有フラーレンナノ粒子の光線力学治療薬としての応用
Project/Area Number |
19K15523
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
杉川 幸太 広島大学, 工学研究科, 助教 (60745503)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | フラーレン / 光線力学療法 / ナノ粒子 / ホストゲスト化学 / 光アンテナ効果 / ポルフィリン / シクロデキストリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は光捕集効果を持つアンテナ分子を含有したフラーレンナノ粒子を合成し、実用可能な光線力学薬剤を開発することを目指す。本年度は計画通り、種々のアンテナ分子を導入したフラーレンナノ粒子の合成を試みた。まずアンテナ分子として15種類のポルフィリン誘導体を用いてtorimehyl-beta-cyclodextrin(TMe-CD)との複合化を試みたところ、7種類のポルフィリン誘導体において十分な水溶化が確認された。得られた各ポルフィリン/TMe-CD複合体とフラーレンC60/CD錯体の混合溶液にポリエチレングリコールを混合し、80℃に加熱することでポルフィリン誘導体含有C60ナノ粒子の合成を試みた。結果、3種類のポルフィリン誘導体において、C60との混合ナノ粒子の形成が確認された。ナノ粒子の同定は、1H-HMR測定、HR-TEM観察、EDX-SEM観察、吸収スペクトル測定等により行なった。過去の研究において、ポルフィリン分子とTMe-CDの錯体の安定性は、ポルフィリン分子が有する官能基の水溶性に大きく依存することが報告されている。今回の実験においても、官能基の水溶性が高すぎるポルフィリン分子は反応中に錯体が崩壊せずに、C60との混合ナノ粒子は形成されなかった。この結果は今後様々なアンテナ分子を用いてC60ナノ粒子を合成する上で、重要な知見になる。合成できた3種類のポルフィリン誘導体含有C60ナノ粒子に対して光照射に対する一重項酸素発生能の評価を行なったところ、C60のみの場合に比べて、高い活性を示すことが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、光アンテナ分子としてフラーレン誘導体を用いて、フラーレンC60との混合ナノ粒子の合成を行なった。予想通り、一部のポルフィリン誘導体においてC60との混合ナノ粒子の形成が確認された。また、C60と複合化するかしないかはポルフィリン誘導体の官能基の親水性が重要であることが示唆され、今後研究を行う上で重要な知見になると考えている。一方で、ポルフィリン誘導体と同様に、シアニン色素を含有したC60ナノ粒子の合成も試みたが、こちらはシクロデキストリンとの複合化が思うように進行せず、課題として残っている。また、ポルフィリン分子の凝集状態が一重項酸素活性に影響する可能性が示唆されており、この点もさらに検討していく必要がある。HeLa細胞に対する毒性試験も実施していく。以上の理由から、おおむね順調に進んでいると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況を踏まえ、合成したポルフィリン誘導体含有フラーレンナノ粒子のHeLa細胞に対する毒性試験を実施する。また、引き続き種々のアンテナ分子 (特にシアニン色素類) を含む混合ナノ粒子の合成を試みる。得られたフラーレンナノ粒子に対して一重項酸素活性試験および細胞毒性試験を行う。 一方、申請書の計画通り、フラーレン誘導体を用いたフラーレンナノ粒子の合成を試みる。現時点では10種程度のフラーレン誘導体に対してシクロデキストリン錯体形成と、ポリエチレングリーコール添加によるナノ粒子形成の評価を行う。得られたフラーレンナノ粒子に対して一重項酸素活性試験と細胞毒性試験を行い、アンテナ分子と複合化するフラーレンの選定を行う。
|