2021 Fiscal Year Research-status Report
ナノ分子磁石における水素結合相互作用と磁気緩和ダイナミクスの解明
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19K15525
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
三橋 了爾 金沢大学, GS教育系, 助教 (60756667)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 単イオン磁石 / 分子間水素結合 / 磁気緩和ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ナノサイズ磁石である単分子磁石化合物における分子間相互作用の磁気緩和ダイナミクスへの影響を解明することを目的としている。単分子磁石化合物は、次世代の高密度記録素子や量子情報処理への応用が期待されているがゼロ磁場下では磁化の量子トンネリングによって迅速な磁気緩和がおこるために、磁気情報を保存できない。申請者は、単分子磁石化合物に分子間相互作用を導入することで量子トンネリングの抑制に取り組む。 前年度までは四面体構造を有するN2O2型コバルト錯体における結晶中の水素結合ネットワークと単分子磁石挙動の相関について報告してきた。その結果、分子間水素結合によって単分子磁石を1次元に配列させた結晶においてゼロ磁場で単分子磁石挙動を示すことが明らかになった。しかし、検討に利用した錯体群は厳密には別分子であり配位子骨格が異なるため分子構造の僅かな違いの影響を無視できない。そこで2021年度は、四面体構造を有するO2X2型コバルト錯体(X=Cl, Br, I)を用いて、ほぼ同型の錯体における単分子磁石挙動の違いについて検討した。いずれの錯体においても結晶中では最近接Co間距離が0.85 nm以上の1次元の水素結合ネットワーク構造が観測された。また、いずれの錯体も外部磁場存在下で単分子磁石挙動を示した一方で、ゼロ磁場では磁化の量子トンネリングを抑制ができないことが明らかになった。これまでの研究結果では、単分子磁石同士を0.6 nm程度の比較的近距離に置くことで隣接分子からの磁気的摂動によって量子トンネリングを抑制できることが分かっている。本年度の結果は、0.85 nm以上の分子間距離では量子トンネリングを抑制するには十分な磁気的摂動を与えられないこと示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で目指す単分子磁石化合物における水素結合相互作用の磁気緩和ダイナミクスへの影響を解明するためには、水素結合ネットワークを形成する様々な化合物における磁気緩和挙動を検証する必要がある。2021年度までに、水素結合ネットワーク構造を形成する二系統の四面体型コバルト(II)錯体を合計7種合成し、その磁気的性質を比較してきた。その結果、ゼロ磁場下において磁化の量子トンネリングを抑制するためには、単分子磁石となる錯体を水素結合相互作用によって1次元に配列させるのみでなく、隣接する2つの錯体との距離を非対称にすることが重要であることが確認できた。さらに、錯体間の磁気的相互作用を誘起するために、錯体間距離を約0.7 nm以下にする必要があることが分かった。これらは、研究計画当初に想定していた検討内容であり、そのほとんどを遂行することができた。次年度はこれまで検討してきた四面体型錯体以外の系について同様の手法を適用し、水素結合相互作用の単分子磁石への影響について検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までは、単分子磁石化合物における水素結合相互作用の磁気緩和ダイナミクスへの影響を解明するために四面体型コバルト(II)錯体を対象として、様々な水素結合ネットワーク構造をもつ結晶を作製してきた。その結果、単分子磁石において量子トンネリングを抑制するためには結晶における分子配列や分子間距離を制御することが重要であることがわかった。本年度は本手法を他の金属錯体に適用し、中心金属イオンや配位構造による水素結合ネットワーク構造の影響を調査する。特に、八面体型錯体やランタノイド(III)イオンについて検討する。そして、単分子磁石化合物の磁気緩和挙動に対する水素結合相互作用の影響を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた国内外の学会がオンラインまたは延期になったため、旅費が繰越となった。また、購入予定だった機器が学内の予算で購入できたため物品費が繰越となった。これらは次年度の旅費および消耗品購入に充てる。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Preparation and Crystal Structure of Tetrakis(μ-2,4,5-trimethoxybenzoato-κO:κO′)bis[(methanol)copper(II)]-N,N-dimethylformamide (1/2) in Relation to Adsorption Property for N22021
Author(s)
M.Mikuriya, C. Yamakawa, K.Tanabe, R. Nukita, D. Yoshioka, R. Mitsuhashi, H.Tanaka, M. Handa, M. Tsuboi
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Journal Title
X-ray Struct. Anal. Online
Volume: 37
Pages: 35-37
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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