2023 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ分子磁石における水素結合相互作用と磁気緩和ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
19K15525
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
三橋 了爾 金沢大学, GS教育系, 准教授 (60756667)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 単イオン磁石 / 分子間水素結合 / 磁気緩和ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、サブナノスケールの磁石である単分子磁石化合物における分子間距離や分子配列を水素結合相互作用によって制御することで、分子間の磁気的相互作用の磁気緩和ダイナミクスへの影響を解明することを目的としている。単分子磁石化合物は、次世代の高密度記録素子や量子情報処理への応用が期待されているが、ゼロ磁場下では磁化の量子トンネリング(QTM)による素早い磁気緩和により磁気情報を維持できない。申請者は単分子磁石化合物に分子間相互作用を導入することで量子トンネリングの抑制に取り組む。 前年度までは、四面体型配位構造を有するN2O2型およびO2X2型コバルト(II)錯体に分子間水素結合を導入することで1次元鎖状ネットワークを形成し、鎖内の分子間距離と磁気緩和時間の相関について比較検討してきた。その結果、錯体間距離が0.6 nm程度かつ2組の隣接錯体間距離が非等価な場合により効果的にQTMが抑制されることがわかった。本年度は、コバルト(II)イオン以外の磁気イオンについて検討するためにランタノイド(Ln)錯体の合成と結晶構造解析に取り組んだ。トリスキレート型のコバルト(III)錯体を錯体配位子としてLn(III)イオンと反応させることでCo-Ln-Co型の三核錯体が得られた。本錯体は、QTMの経路の一つである面内磁気異方性をもたない擬三回対称性を有するためQTMの抑制が期待できる。一方で、結晶中の分子間距離が1 nm以上あり、分子間の磁気的相互作用は無視できるほど離れていることがわかった。そのため、分子間相互作用と磁気ダイナミクスの相関を調査するためには、異なる結晶系で結晶化する必要があることがわかった。
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Research Products
(9 results)