2020 Fiscal Year Research-status Report
ポリロタキサン構造に基づく刺激増幅機構を利用した高感度酸素活性種センサの創生
Project/Area Number |
19K15529
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
千葉 湧介 筑波大学, 数理物質系, 助教 (10823718)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ロタキサン / 蛍光センサ / メタセシス反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
特定の化学種と反応することで発光する蛍光センサはバイオイメージングのツールとして有用である。現在、シグナル伝達に大きな影響を及ぼすと考えられる酸素活性種や窒素活性種のセンシングは注目されている。しかし、それら化学種は存在量が少なく、高反応性であるために短寿命であることから検知することが難しい。以上の理由から酸素活性種や窒素活性種のための蛍光センサの開発が求められる。従来の蛍光センシングでは、ターゲットの化学種と蛍光センサ分子との1:1反応を用いた手法が取られていた。一方、ターゲット化学種一分子との反応によって複数の蛍光分子の発光がオンとなる分子システムを構築することができれば、さらなる高感度センシングを実現できると期待できる。本研究では、刺激増幅型のセンシング様式を組み込んだ、ポリロタキサンセンサによって以上のシステムを構築することを目的とする。2年目では、環状分子にこれまでとは異なるリンカーを用いて蛍光部位を導入する検討を行った。その結果、ピレンをもつ新規[2]-ロタキサンの合成に成功した。これによって、蛍光部位とクエンチャーとなる軸分子間の距離や配向を制御可能となり、蛍光の失活効率の調整が期待できる。また、本ロタキサンにはフッ素アニオンによって除去可能なストッパー部位を導入していることから、フッ素アニオンによる蛍光強度の変化を分析したところ、フッ素アニオンを添加することによってピレン由来の蛍光が増強することが観測された。以上の結果は、フッ素アニオンによってロタキサン構造が分解し、ピレンから軸分子に含まれるビオロゲン部位への光誘起電子移動による失活過程が抑制されたためであると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、ロタキサンの刺激増幅機構を利用することで、酸素活性種や窒素活性種を高感度にセンシングするシステムの構築である。初年度に開発したロタキサンの合成法を用いることで、環状分子と発光部位間の距離が異なる[2]-ロタキサンの合成に成功した。また、環状分子にエステル結合を介してピレン部位を導入した新規[2]-ロタキサンの合成に成功した。これによってエステル結合を介した様々な蛍光ユニットを導入可能であると期待できる。また、DMSO中において[2]-ロタキサンに対してフッ素アニオンを添加したところ、ピレンに由来する蛍光強度が増強した。ピレン部位をもたない比較の[2]-ロタキサンにおいてはフッ素アニオンを加えることでロタキサン構造が分解することが明らかとなっている。以上の結果から、この[2]-ロタキサンはフッ素アニオンによって、ロタキサン構造の分解することで蛍光増強を示すと推測される。本結果は、目標とする酸素活性種や窒素活性種に対して高感度にセンシング可能なポリロタキサン合成のための重要な知見であり、次年度以降の研究につながるものと期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1) ポリロタキサンの合成とセンシング能の調査:まず、ポリロタキサンの合成検討を行う。具体的には、[2]-ロタキサン合成の反応条件から、ストッパー分子の当量を減らすことによってポリロタキサンの合成を試みる。また、得られたポリロタキサンがターゲット化学種一分子によって複数の蛍光分子の蛍光がONになるかどうかを検討する。 2) ピレン部位を二箇所導入した[2]-ロタキサンの合成:これまでに合成したピレン部位を一つもつ[2]-ロタキサンは軸分子による消光効率が悪いことが問題として挙げられる。環状分子にピレン部位を二つ導入することができれば、ロタキサン構造の分解によってエキシマー発光がONとなる高効率なセンシングシステムを構築できると期待できる。そこで、ピレン部位を二箇所導入した[2]-ロタキサンの合成を試みる。 3) 蛍光センシングの溶媒依存性:本研究で用いるロタキサンセンサは、ロタキサン構造が分解した後もクエンチャーの軸分子が残る。溶媒によっては、擬ロタキサン構造を形成し高効率な蛍光増強を示さない可能性がある。そこで、センシングに適した溶媒条件を検討する。
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Research Products
(6 results)