2019 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis of a cubic molecule capturing an electron; perfluorocubane
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19K15532
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋山 みどり 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (50807055)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | キュバン / フッ素化 / フッ素ガス |
Outline of Annual Research Achievements |
箱型分子であるキュバンが完全にフッ素化されたペルフルオロキュバンは,「内部に電子を閉じこめる」として注目され,理論計算による研究が進んでいる。この分子では,全原子の中で最も電気陰性であるフッ素の影響で炭素-フッ素反月合成軌道が炭素側に大きく張り出している。8つの反結合性軌道が箱の内部に集合しており,ここに入った電子が熱力学的かつ速度論的に安定化されることが提唱されている。しかしペルフルオロキュバンの合成は未だ達成されておらず,「電子を閉じこめる」という仮説は実験的に証明されていない。本研究では,申請者らの独自の技術であるフッ素ガスを用いた有機化合物の直接フッ素化を用い,前人未到の箱型分子ペルフルオロキュバンの合成を目指している。この分子が期待どおり電子を閉じこめることを検証し,閉じこめられた電子の性質を解明することを,本研究の最終的な目標とする。 2019年度はフッ素ガスを用いた直接フッ素化法を用いたキュバンジカルボン酸ジエステルの六フッ素化および,その後の変換反応について検討を行った。主な成果は①キュバンジカルボン酸ジエステルの六フッ素化が最高収率49%で進行する条件を見出したこと,②その後の変換反応によってヘキサフルオロジヒドロキュバンの単離・構造決定に成功したことである。また,ヘキサフルオロジヒドロキュバンのさらなる変換反応により③目的化合物であるペルフルオロキュバンの示唆する予備的な実験データも得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の進捗は計画通りに進んでいる。詳細を以下に述べる。 ①フッ素ガスを用いた直接フッ素化反応によって,キュバンジカルボン酸ジエステルの六フッ素化に成功した。前駆体のエステル部位の構造が収率に大きく影響を与えることを見出した。また,フッ素ガスの流量や反応温度の制御によって副反応の抑制に成功した。最適条件で反応を行うことで,40~49%と中程度の収率でヘキサフルオロキュバンジカルボン酸ジエステルを合成できた。 ②ヘキサフルオロキュバンジカルボン酸ジエステルのエステル交換および加水分解を検討し,ヘキサフルオロジヒドロキュバンの合成・単離に成功した。単結晶X線構造解析を行い,構造を決定した。 ③現在はヘキサフルオロジヒドロキュバンを出発原料としてペルフルオロキュバンの合成を試みている。予備的ではあるが,目的化合物の生成を示唆するNMRデータが得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はフッ素化反応のスケールアップおよび収率改善およびペルフルオロキュバンの単離および物性の解明を目指す。現状,フッ素化反応は小スケールしか行えない状態であり,この反応がボトルネックになってしまっている。研究効率の向上のためにはフッ素化反応のスケールアップおよび収率向上が不可欠であるため,さらなる条件検討を行う。並行して,ペルフルオロキュバンの単離の検討を行う。予備的なデータが得られており,ヘキサフルオロジヒドロキュバンを原料として目的化合物が合成できる可能性が高い。ペルフルオロキュバンが単離出来たら,サイクリックボルタンメトリーによる酸化還元特性の調査および,電気的・化学的な一電子還元によるペルフルオロキュバンラジカルアニオンの単離を検討する。
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