2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of perfluorinated multiblock amphiphiles
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19K15534
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 浩平 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (40825197)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機化学 / 超分子化学 / 両親媒性分子 / パーフルオロベンゼン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は複数回膜貫通型フルオラスナノチャネル分子の合成ルート構築並びに、その物性評価について重点的に研究を行なった。まず、膜貫通部位であるビスペンタフルオロフェニルエチニルテトラフルオロベンゼンを薗頭カップリングにより合成した。次に、親水部位であるオリゴエチレングリコール鎖をウィリアムソンエーテル合成法によって導入することで、複数回膜貫通型フルオラスナノチャネル分子の繰り返し単位である両親媒性フルオラス分子の合成に成功した。得られた分子は、核磁気共鳴スペクトル、質量分析および元素分析によって構造の同定と純度の確認を行った。 そこで、この両親媒性分子をリン脂質から成るリポソーム分散液と混合することで、脂質二重層への導入を試みた。脂質二重層への導入は紫外可視吸光度測定、蛍光スペクトル測定および蛍光顕微鏡観察によって確認した。すると興味深いことに、合成した両親媒性フルオラス分子はフッ素原子を含まない同様の両親媒性分子と比較して、脂質二重層への導入効率が40倍以上も向上していることが明らかとなった。これは膜貫通部位へのフッ素の導入により、フッ素原子の2sないし2p軌道と芳香族炭素上の軌道との重なりによってC-F結合が非分極性となったことで脂質に対する親和性が向上したためと考えられる。これは今後の複数回膜貫通型フルオラスナノチャネル分子の機能開拓において極めて重要な性質であり、今後の研究展開に大いに期待が持てる結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初設計した複数回膜貫通型フルオラスナノチャネル分子そのものの合成にはまだ至っていないものの、その繰り返し単位である両親媒性フルオラス分子の合成にはすでに成功している。一方で、合成した両親媒性フルオラス分子がフッ素原子を含まない同様の両親媒性分子と比較して、40倍以上もの脂質二重層への導入効率を有しているという、当初は予期していなかった魅力的物性を見い出すことができた。そのため、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、すでに合成した両親媒性フルオラス分子をオリゴマー化することで、当初設計した複数回膜貫通型フルオラスナノチャネル分子の合成を目指す。合成終了後は、天然の膜タンパク質の物質輸送測定と同様の手法を用いることで、複数回膜貫通型フルオラスナノチャネル分子の膜間物質輸送能を検討し、特にフッ素原子の導入による影響を検討していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染流行の影響により、研究発表を予定していた国際学会の開催が中止となった。そのため、本出張に関わる参加費・旅費が返納され、結果として次年度使用額が生じることとなった。2020年度はこの額を利用して、新たな国際学会に参加し、研究成果の発表を行う予定である。
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