2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K15536
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
藤本 圭佑 静岡大学, 工学部, 助教 (10824542)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多環芳香族化合物 / 酸化還元活性 / 機能性色素 / 有機半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究により、中央に二つの六員環構造を持った5,11-ジアザジベンゾ[hi,qr]テトラセンの合成に成功し、その物性および反応性を明らかにしていた。これについて、より詳細な分析を加えることにより、論文発表を行った(Chem. Eur. J. in press, DOI: 10.1002/chem.202100944)。続いて、n型半導体としての有機薄膜太陽電池デバイスへの応用を志向して、直接結合型二量体の合成を検討したが、様々なカップリング反応を検討した結果、目的生成物を得ることには至らなかった。 続いて、中央に五員環-六員環構造を持つ類縁体の合成を検討した。その結果、N-アセチル基を有する前駆体に対して、銅を用いた分子内C-I/N-Hカップリングを行うことで目的の分子骨格(ベンゾ[de]インドロ[3,2-b]キノリン)を構築することに成功した。酸化還元活性構造へ変換するためにN-アセチル基の脱保護を試みたところ、分子骨格に酸素原子が付加した酸化体が得られることが判明した。この酸素原子導入について、その反応機構の調査を検討したところ、出発物の脱プロトン化に続く、空気中の酸素分子による酸化を経由して、酸化体が生じることわかった。また、本化合物は光照射下においても酸化体を与えることが判明した。この酸化体の構造を決定づけるには至っていないが、光照射を駆動力として酸素分子と反応することが示唆された。以上の結果より、ベンゾ[de]インドロ[3,2-b]キノリンの還元体は、塩基存在下および光照射下において酸素分子を効率よく活性化する化合物であることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な合成経路を探索することにより、中央に六員環-六員環構造を持つ5,11-ジアザジベンゾ[hi,qr]テトラセン、および中央に五員環-六員環構造を持つベンゾ[de]インドロ[3,2-b]キノリンを合成することが可能となった。一方で、中央に五員環-七員環構造または六員環-七員環構造を持つ類縁体の合成には至っておらず、反応条件および合成ルートの再検討が必要であると考えられる。よって、分子骨格構築の点においては、おおむね順調に進展している。 物性および反応性の調査を行ったところ、5,11-ジアザジベンゾ[hi,qr]テトラセンは高い電子受容性に加え、定量的で可逆な酸化還元反応が可能であるという特有の性質を示した。また、ベンゾ[de]インドロ[3,2-b]キノリンは酸化体を生じる際に空気中の酸素分子を効率よく活性化することが示唆された。そのため、環境応答性色素や酸化触媒として酸化還元活性を用いた機能探索が十分に可能であると考えられる。 さらに、5,11-ジアザジベンゾ[hi,qr]テトラセンは化学修飾による物性制御が可能であり、有機半導体としての応用を検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、反応条件および合成ルートを検討することで、骨格中央に五員環-七員環構造または六員環-七員環構造を持つ類縁体の合成を目指す。具体的には、窒素原子上に保護基を導入することで、副反応の抑制や、反応性(窒素原子の求核性)の制御を行う。また、酸化に頼らない合成ルートを模索する。 六員環-六員環構造を有する5,11-ジアザジベンゾ[hi,qr]テトラセンについては、化学修飾が可能であることを生かし、吸収特性、LUMO準位および溶解性の制御や多量化による高次構造の構築を行うことで、有機薄膜太陽電池への応用展開を模索する。 また、ベンゾ[de]インドロ[3,2-b]キノリンの還元体は塩基存在下および光照射下において空気中の酸素分子を効率よく活性化することが示唆されている。よって、スルフィドやホスフィンなどの酸素原子アクセプタの酸化反応をモデルとして、酸化触媒としての機能を探索する。
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Causes of Carryover |
年度末に期限付きの他の財源が生じたため、そちらを優先的に使用した結果、当該助成金が少し余ってしまった。未使用額は実験等に使用する消耗品を購入する予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] 5,11-Diazadibenzo[hi,qr]tetracene: Synthesis, Properties, and Reactivity toward Nucleophilic Reagents2021
Author(s)
Keisuke Fujimoto, Satoshi Takimoto, Shota Masuda, Toshiyasu Inuzuka, Kazutaka Sanada, Masami Sakamoto, and Masaki Takahashi
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Journal Title
Chemistry - A European Journal
Volume: 27
Pages: 8951-8955
DOI
Peer Reviewed
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