2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K15537
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
八木 亜樹子 名古屋大学, 理学研究科(WPI), 特任准教授 (20803282)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナノカーボン / デンドリマー / 無修飾 / ポリパラフェニレン / ポリチオフェン |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノカーボン類は特異な機械的・電子的性質をもち、広く研究、応用されている物質群である。近年ではその精密合成を目指し、有機小分子からボトムアップ式に合成する方法論の開発が精力的に行われている。しかしナノカーボン類は多くの溶媒中で凝集しやすく、ボトムアップ合成ではアルキル基などの修飾基を多数導入する必要がある。修飾基はナノカーボン類の物性変化をもたらすことから、無修飾のナノカーボンを合成する手法の開発が望まれている。そこで本研究では、固相合成法を用いて無修飾ナノカーボンを精密合成することを目指した。固相合成法は生体分子の合成に多用されてきたが、その合成法としての特性を利用すれば、分子間での凝集を防ぐ有効な手法となると期待される。これまで、ポリスチレンレジンを用いてオリゴパラフェニレンを固相合成することに成功している。また、固相合成で得た知見を活かし、新たにデンドリマー担体を独自で設計・合成し、無修飾ナノカーボン合成に適用した。結果、ポリチオフェンやポリパラフェニレン、ポリフルオレンなどの無修飾ポリアレーン類を種々合成することができた。デンドリマー担体が結合した状態の無修飾ポリアレーンは、デンドリマーによって可溶化されているため、これらの光学物性測定も行うことができる。実際に本研究で得られた無修飾ポリチオフェンにおいて、これまでに合成されたポリ(3-ヘキシルチオフェン)に比べて吸収波長や蛍光波長が長波長シフトしていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
固相合成法を用いた難溶性化合物の合成に関する研究を遂行する過程で、高度に分岐した樹状構造を有する分子であるデンドリマーが難溶性ナノカーボンの合成に利用できることを見出した。そこで、デンドリマー担体法という新たな難溶性分子合成手法の開発に着手した。実際に、多数の分枝型長鎖アルキル基を有する三次元的な構造の新規デンドリマーを設計し、合成することに成功した。更に、このデンドリマーを用いることで難溶性の無修飾芳香族系高分子を合成することができている。研究計画にある無修飾ナノグラフェンの合成にも着手しており、その実現可能性は高い。カーボンナノベルトを用いた無修飾カーボンナノチューブ合成に着手できていないものの、研究はおおむね順調に進展しており、期待以上の成果が得られる可能性は高いと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、更に難溶性芳香族系高分子を合成するとともに、本手法を種々のナノカーボン合成に応用する。また、合成された新規π共役分子群の物性解明研究を行う。具体的には、まず初めに無修飾ポリベンゾトリアゾールの合成をデンドリマー担体法によって行う。さらに、ブロック共重合体や交互共重合体の合成も試みる。これらの難溶性芳香族系高分子の合成に用いるモノマー分子は既に合成することに成功している。昨年度に合成した二種類の無修飾芳香族系高分子と併せて多くの難溶性分子を合成することで、開発した本手法の有用性と一般性を証明することを目指す。 また、本年度はこのデンドリマー担体法を難溶性ナノカーボン合成に広く適用可能な手法へと昇華させることも目的とする。デンドリマー担体法によって難溶性である無修飾芳香族系高分子を合成することに成功したが、現在用いているデンドリマー担体は酸化的な反応条件において分解しやすいという問題を有している。ナノカーボンの合成では、臭素化や酸化的脱水素環化などの酸化的な反応を用いる場合が極めて多い。すなわち、酸化的な条件下で安定に存在しうるデンドリマー担体の開発は、デンドリマー担体法を難溶性ナノカーボン合成における一般的な手法をする上で必須である。このような背景のもと、アルキルエーテル骨格のみからなるデンドリマー担体の合成とその応用を行う。
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Research Products
(1 results)