2019 Fiscal Year Research-status Report
カーボンナノチューブへの有機ハロゲン化剤の効率内包法と安定ドーピング技術の開発
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19K15539
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大町 遼 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 講師 (60711497)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 薄膜トランジスタ / イソマルトデキストリン / 水系相分離 / 熱架橋アミンポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
カーボンナノチューブは優れた導電性を有する魅力的な物質であるが、実際に電子デバイスなどへ応用する場合には、その物性制御が必要不可欠である。本研究では有機化学的なアプローチによるナノカーボン材料の物性変調、特にカーボンナノチューブに着目して研究を行った。まず、ターゲットとなる半導体カーボンナノチューブの精製方法を確立した。これまではカラムや超遠心精製に依存して少量しか得られない精製法がほとんどであったが、水溶性食物繊維であるイソマルトデキストリンを利用した水系2相分離により大量に半導体カーボンナノチューブを得る手法を開発した。本精製方法ではイソマルトデキストリンに含まれる連続する1,6-グルコシド結合の存在が、分離の鍵であることが明らかとなった。さらに、得られた半導体カーボンナノチューブを用いて薄膜トランジスタを作製するにあたり、薄膜の作成方法が極めて重要になる。この点においても熱架橋性アミンポリマーを利用する新手法を開発した。本手法によりポリエチレンナフタレートのようなプラスチックのフレキシブル基板に対してもカーボンナノチューブの成膜が可能になった。実際に作成した薄膜トランジスタはp型特性を示しながらも優れたon/off比とともに高い電流密度で動作することが明らかになった。さらにカーボンナノチューブの内部にグラフェンナノリボンを合成する手法の開発にも成功しており、さらなる研究の発展が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では半導体カーボンナノチューブの精製方法と薄膜トランジスタの作成方法を確立したが、その過程におけるナノカーボン材料の化学的な取り扱いを探索していく上で、当初は想定していない新反応を発見するに至った。具体的には、酸化グラフェンの化学修飾による物性制御とバッテリー応用への展開、そして酸化グラフェンの親水性分離である。今後はカーボンナノチューブに限定せず、様々なナノカーボン材料をターゲットとして研究展開していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目標をおおよそ達成していることから、今後はカーボンナノチューブに限定せず、様々なナノカーボン材料をターゲットとして研究展開していく予定である。カーボンナノチューブンについてはCMOS型のインバータやリングオシレータといった上位デバイスの作成と評価、また酸化グラフェンデバイスの性能向上にも取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響により、購入予定の物品および学会がキャンセルとなったため。 使用計画としては物品費に計上する予定である。
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