2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of new mechanofluorochromic materials based on borepin structure
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19K15543
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
安達 洋平 広島大学, 工学研究科, 助教 (50805215)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 固体発光 / メカノクロミック / ホウ素 / ボレピン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、特異な固体発光特性を示すベンゾ[d]ジチエノ[b,f]ボレピンに様々な置換基を導入することで、結晶構造や電子状態が固体状態の発光色にどのように影響を与えるかを調査し、革新的な動的発光性分子材料の創出につながる、新しい分子設計のコンセプトを得ることが目的である。 令和元年度においては、研究計画書に従い、まずはベンゾ[d]ジチエノ[b,f]ボレピンのチオフェン環にフェニルチオ基やヨウ素、アリール基などの様々な置換基を導入した化合物を合成した。現在のところ、一部の化合物においては単結晶構造解析が完了しているが、赤色発光特性の原因と考えられる分子間相互作用は特定できていない。π電子系が拡張するような置換基(チオフェニル基やアリール基など)を導入した化合物では、赤色発光が観測されなかった。 その一方で、ホウ素上のアリール基を置換した化合物についても合成を行った。アリール基をメシチル基からトリクロロフェニル基やトリス(トリフルオロメチル)フェニル基へ置換した化合物においては、メシチル体と同様に赤色発光が見られたことから、今後、固体発光の測定と単結晶構造解析を行うことで、赤色発光の機構の解明を目指す。また、三配位ホウ素上にN-ヘテロ環状カルベン(NHC)を配位させた、カチオン性のボレピン誘導体(ボレピニウムイオン)についても合成を行った。残念ながらこの化合物では赤色発光特性は観測されなかったが、その高い化学的安定性や電子不足な物性は興味深いものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い、合成は概ね順調に進展している。チオフェン上にフェニル基などの共役を拡張するような置換基を導入した化合物では赤色発光特性を示さなくなる傾向があることから、チオフェン上だけでなく、ホウ素上の置換基を変更した化合物についても合成を行っている。そのため、従来と異なる合成経路を開拓する必要があったことから、反応条件検討にやや時間を要した。構造や物性の解析については今後行っていく予定である。特に、赤色発光の機構を解明するには単結晶構造解析が必須であると考えられるが、単結晶の作製にやや難がある化合物が多く、結晶化の条件検討を行っているところである。また、ホウ素上にNHCを配位させたカチオン性の化合物については、すでに国際的な学術誌に成果を発表済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を元に、研究を進める。令和二年度は、具体的に以下の検討を予定している。 ①様々なアリール置換基をホウ素上に置換したボレピン誘導体の構造・物性解析 これまでにホウ素上にメシチル基やトリクロロフェニル基、トリス(トリフルオロメチル)フェニル基を導入した化合物を合成し、それらが赤色発光を示すことを確認した。これらの単結晶X線構造解析及び固体発光測定を行い、赤色発光の機構を解明することを試みる。また、摩砕や溶媒蒸気に対して発光色がどのように変化するかを調査することで、メカノフルオロクロミック(MFC)特性を明らかにする。 ②様々なシリル基を導入した誘導体の合成 上述のように、ボレピンを含むπ電子系の電子状態が大きく変化すると、赤色発光特性が見られなくなる可能性がある。そこで、TMS基やTBS基、TIPS基などの大きさの異なるシリル基を導入することで、電子状態を大きく変化させることなく、固体状態のパッキング構造を変化させることで、赤色発光特性の機構解明を目指す。
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Causes of Carryover |
令和元年度中に、研究代表者が一時的に海外研究機関に滞在していた期間があるため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は令和二年度予算と合わせ、主に物品の購入に使用する。具体的には令和元年度に購入予定であった低温恒温槽の購入と、消耗品の購入を計画している。消耗品としては原料となる試薬類(3-ブロモチオフェンや1,3,5-トリストリフルオトメチルベンゼンなど)、手袋やガラス器具など、有機合成に用いる物品の購入を予定している。
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