2019 Fiscal Year Research-status Report
Diboron transition metal complexes: a new strategy to study metal-assisted B-B bond activation in borylation reactions
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19K15544
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
SHANG RONG 広島大学, 理学研究科, 助教 (70754216)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ジボロン(4)を活性化 / ジボロン錯体 / B-B σ錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,遷移金属元素によるB-B結合活性化の機構を実験的に明らかにするために,配位子として含窒素三員環azadiboriridine(BNB)を用いて,B-B結合活性化の遷移状態モデルとみなせるTM-ジボロン錯体を合成することを目標とした。合成した錯体の構造解析および反応性を精査することで,結合活性化のメカニズム解明に迫るとともに,ホウ素-金属錯体の反応性に及ぼす置換基効果を明らかにすることも目標とした。B-B活性化の遷移状態モデルとみなせる単離可能な単核ジボロン錯体の簡便かつ拡張性に優れた合成法を開発し,未解明の構造,結合および反応性を調べることである。未解明であった触媒的ホウ素化プロセスの最初の,そして触媒サイクルで重要なステップである金属により促進されたB-B結合活性化のメカニズム解明に挑む。さらに,遷移金属に電気陽性な2つのホウ素原子が直接結合したことで発現すると期待される新規反応性についても精査する。BNB配位子のホウ素上の置換基を変化させ,11族 金(I)錯体形成における置換基の立体的および電子的効果を調べる。置換基を変化させた類縁物を2種類合成した。特にメシチル基を付加させたものの金錯体については、電子および立体効果による構造の変化やホウ素間結合距離の伸長が確認されている。BNB配位子とイリジウムおよび白金との錯体形成により,第10族および第11族金属錯体によるB-B結合活性化に対する金属共配位子効果を調べた。新規Ir-BNB、Pt-BNB錯体の合成に成功した。構造解析の結果から、これら2種類の金属とホウ素間の結合は酸化的付加というよりもむしろ、eta2-BBのσ配位による3中心2電子結合であることが判明した。金(I)ジボロン錯体から含ホウ素N-ヘテロ環状カルベン(BNC)錯体を合成し,構造決定および物理的,化学的特性に及ぼすホウ素の電子的効果を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既知の合成法を参考に、tBuNH2を原料として8段階で配位子bis(tert-butyl)mestylazadiboriridine(BNB-Mes)の合成を行い、5種の金錯体と反応させ、全錯体のX線構造を得ることに成功した。そこから、BNB配位子の系と同様に3種類の構造が得られることが明らかとなった。また、amino-derivative (BNB-N)配位子を合成するために、(R)2N-BCl2をiminoboraneと反応させる従来の合成法は、窒素原子の非共有電子対がホウ素に共役し反応は進行しなかった。そのため、三塩化ホウ素を用いてホウ素のみを挿入した類縁物を合成し、2当量のジイソプロピルアミノ基を添加することで配位子前駆体の合成に成功した。現在、厳密な還元条件を見出し、新規BNB-N配位子の合成及びX線結晶構造解析による構造の同定に成功している。 まずプラチナ錯体とBNB配位子との反応を行った。その結果、新規Pt-BNB錯体がNMR及びX線結晶構造解析によって同定された。Pt-BNB錯体について、B-B結合の長さ(1.85A)はB-B共有結合半径の合計(1.68A)よりも長いが、Van der Waals 半径の合計(3.40A)よりも短い。そのため、プラチナとホウ素間の結合は酸化的付加というよりも、eta2-BBのσ配位による3中心2電子結合とみなすことができる。 また、BNB配位子と[IrCl(COE)]2との反応ではCOE配位子とBNB配位子の配位子交換が起こり、Cl原子が2つのイリジウムを架橋した二量体がX線結晶構造解析によって同定された。一方、[IrCl(COD)]2との反応では単量体を与えた。それは、キレート効果によりCOD配位子が強く配位するため、配位子交換は起きず、Cl原子とイリジウム間の結合の開裂が起こったためと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
新規配位子BNB-Nと金錯体から錯形成を行い、得られた新規金錯体の構造パラメータをBNB、BNB-Mesの系と比較する。そこから、反応性および構造に及ぼす置換基の系統的な効果を精査する。また、σ電子効果が期待されるsilyl-derivative (BNB-Si)配位子の合成にも着手する。 さらに、先行研究で合成されたAu-BNB錯体との反応性の比較を行っていく予定である。Au-BNB錯体では求核剤であるイソシアニドとの反応により、新規ホウ素含有カルベンBNC錯体の前駆体を生成した。BNC錯体は五員環配位子が4π反芳香族性を持つために非常に不安定であることが予測されている。五員環配位子上の置換基はすべてtBu基であるため、立体嵩のより小さなメシチル基およびアミノ基を含有したAu-BNB-MesおよびAu-BNB-N錯体を用いたBNC錯体の合成には、熱力学的な安定化を期待している。また、前駆体の合成は、求核剤がルイス酸性度の高いボリル部位に求核攻撃することから始まる。一方で、合成したPt-BNB及びIr-BNBはB-Bのσ錯体というAu-BNB錯体とは異なる結合様式を持つ。これら両方の錯体に関して理論計算を行ったところ、最低空軌道(LUMO)はホウ素のp軌道と金属上に存在する。そのため、求核剤との反応を行い生成物の同定を試みることにより反応性の比較が可能であると考える。イソシアニドだけではなく、一酸化炭素などのAu-BNB錯体では生成物の同定が困難であったものに関しても反応を行いたいと考えている。また、前周期の11族金属(AgやCu)とBNB配位子の錯形成も同時に行い、遷移金属に電気陽性な2つのホウ素原子が直接結合したことで発現すると期待される新規反応性についても精査する。
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Research Products
(4 results)