2019 Fiscal Year Research-status Report
Concise synthesis of nanographene by solid-state cross-coupling reaction
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19K15547
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
久保田 浩司 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任助教 (60824828)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ナノグラフェン / クロスカップリング / 固体反応 / メカノケミストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度はナノグラフェンの精密固相合成を達成するために、固体状態で効率良く進行するメカノケミカルクロスカップリング反応の開発を行った。その結果、難溶性化合物にも適用可能なボールミルを用いた固体鈴木-宮浦クロスカップリング反応の開発に成功した (K. Kubota et al. Chem. Sci. 2019, 10, 8202.)。この反応の成功の鍵は1,5-シクロオクタジエンを少量添加することであり、幅広い基質に適応できる汎用的なカップリング反応を開発することができた。特に、多環状芳香族化合物やポルフィリンなどの難溶解性化合物を基質とする場合でも効率よくカップリング反応が進行する。さらに粉末X線構造解析、透過型電子顕微鏡 (TEM)、固体31P NMR、ESI-MS測定を行い、オレフィン添加による効果についても重要な知見が得られた。 また、固体状態で効率良くC-H官能基化反応の開発を目指し種々検討を行った結果、「メカノレドックス反応」という概念的に新しいレドックス反応の開発に世界で初めて成功した(Kubota, K. et al. Science 2019, 366, 1500.)。この反応では触媒として圧電材料を使用する。圧電材料をボールミル反応に共存させることで、ジアゾニウム塩が圧電材料からのピエゾ電気により一電子還元され、対応する芳香族ラジカルが生じ、これがラジカルアクセプターと反応することで芳香族化合物のCHカップリングおよびホウ素化生成物が得られることを見出した。この方法は、有害な有機溶媒を用いず空気中で実施可能であり、フォトレドックス触媒系にない利点を備える新しいレドックス反応として期待できる。実際に、難溶性化合物であるコロネンのCHアリール化を達成した。 今後は新たに開発した固体カップリング反応とメカノレドックス反応を活用し、ナノグラフェンの固相精密合成を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究のターゲットであるナノグラフェン合成に適用可能な2つの鍵となる固体反応の開発に成功したため、計画以上に進展していると考えている。ナノグラフェンは次世代カーボンマテリアルとして注目されてるが、原料あるいは生成物が溶媒に溶けないという「溶解性問題」のため、その分子デザインや合成スケールに大きな制限があった。本研究の目的は、「溶解性問題」に影響されないナノグラフェンの固相ボトムアップ精密合成を達成することである。そのため、固体状態で効率良く進行する新反応の開発が必要であった。本年度は、固体状態で進行する鈴木-宮浦クロスカップリング反応(K. Kubota et al. Chem. Sci. 2019, 10, 8202.)とメカノレドックス反応(Kubota, K. et al. Science 2019, 366, 1500.)の開発に成功した。これらの反応は有機溶媒を用いて基質を溶解させることなく、固体のまま反応を実施することが可能である。実際にコロネンなどの多環状芳香族化合物やポルフィリンなどの難溶解性化合物を基質とする場合でも効率よく炭素-炭素結合形成反応が進行する。今後は、これらの反応を駆使し、芳香環ユニットを順次連結していくことで環構造を精密に制御しつつ新奇の構造をもつナノグラフェンの精密合成を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で開発した固体状態で進行する鈴木-宮浦クロスカップリング反応(K. Kubota et al. Chem. Sci. 2019, 10, 8202.)とメカノレドックス反応(Kubota, K. et al. Science 2019, 366, 1500.)を駆使し、環構造を精密に制御しつつ新奇の構造をもつナノグラフェンの精密メカノケミカル合成を検討する。具体的には、京都大学の杉野目らが報告したカップリング反応を段階的に行う合成戦略(Suginome et al. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 758.)を我々の固体カップリング反応に適用し、多様な多環芳香族化合物の精密合成を行う。このようにして得られた多環芳香族化合物のメカノケミカル固相Scholl反応(L. Borchardt et al. Chem. Commun. 2018, 54, 5307.)を行うことで、多様なナノグラフェンのメカノケミカル合成を検討する。また別のアプローチとして、我々が開発した固体クロスカップリング反応を駆使し、溶媒を用いない固体クロスカップリング重合反応の開発を行う。らに重合した分子に対してメカノケミカル固相Scholl反応(L. Borchardt et al. Chem. Commun. 2018, 54, 5307.)を行うことで、ナノグラフェン類の精密ボトムアップ固相合成を目指す。
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Research Products
(20 results)